台湾の蔡英文総統(右)と中国の王毅外相(C)朝日新聞社
台湾の蔡英文総統(右)と中国の王毅外相(C)朝日新聞社

 中国の王毅外相が台湾との関係について「日本が一線を超えるようなことはあってはならない」「台湾は中国の領土だ」と10月、ビデオメッセージでくぎを刺している。

「中国寄り」とされる林氏が外相に就任すれば、安倍氏と水面下で対立するリスクは高い。

 岸田派の源流となる宏池会の事務所から自民党本部に入り、20年以上政務調査会で務めた政治評論家、田村重信氏はこう話す。

「中選挙区制度の時代、同じ区から自民党候補2人、3人が出て当選を争っていた。野党ではなく、党内の議員がライバルだった。安倍、林両氏の父親時代はお互いが一番の政敵だったから歴史的に見ても、2人がうまくいかないのは当然です。そこに次の衆院選で合区問題が控えている。隣区の林氏が衆院転出後、いきなり外相に抜擢されれば、安倍氏は面白いはずがない。昔は財務相が最重要閣僚と言われたが、今は外相の方が格が上とみる人もいる。林氏は東大、ハーバード大卒で英語も堪能。アメリカの上院議員のアシスタントとして仕事もしていたので起用はバッチリ。そして林氏と似た経歴の茂木氏が幹事長でしょう。岸田首相は明らかに長期政権を狙った人事をしている。岸田首相はああ見えて老獪でやるときはやるんです。この衆院選でも投開票日が仏滅でも、迷わずに決断した。幹事長交代のドサクサで自派閥の林氏を外相に押し込み、足場を着実に固めている」

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

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大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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