宏池会の政治資金パーティーに出席した会長の岸田首相(左)と林芳正・元文部科学相(C)朝日新聞社
宏池会の政治資金パーティーに出席した会長の岸田首相(左)と林芳正・元文部科学相(C)朝日新聞社

 11月10日に衆参の両院で行われる首相指名選挙を経て岸田文雄首相は第2次岸田内閣を発足させる。衆院選の小選挙区(神奈川13区)で敗れた責任をとって自民党幹事長を辞任した甘利明氏の後任に茂木敏充前外相を起用した岸田首相。空席になった外相ポストに岸田派ナンバー2の林芳正元文科相を起用することを決めた。この人事が安倍晋三元首相、麻生太郎副総裁との間でハレーションとなっている。

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「負けると言われた衆院選で261議席も取れたのは幹事長の功績だ。辞める必要はない」

 麻生氏は甘利氏をこう説得しようとしたが、結局は辞任となった。

「3A」と呼ばれた安倍、麻生、甘利の3氏だったが、甘利氏が失脚。残る「2A」は次の幹事長を擁立すべく動いた。安倍氏に近い高市早苗政調会長や麻生派の河野太郎広報本部長の名前が後任幹事長として上がったが、岸田首相は茂木氏の起用を即決したという。

「岸田首相はメディアの下馬評を覆し、衆院選で261議席という絶対安定多数を維持した。当初から甘利氏の幹事長起用は乗り気ではなかったので、小選挙区で落選は渡りに船。一気に茂木幹事長を決めた。その時点で岸田首相は、次の一手を考えていた」(岸田派の国会議員)

 それが茂木幹事長の後任として林氏を外相起用することだった。

 しかし、「2A」は林氏の起用には不快感を示したという。岸田派で今も影響力を有しているのが、幹事長などを歴任した長老、古賀誠氏だ。しかし、古賀氏と麻生氏が犬猿の仲であることは政界では知られた話だ。

「岸田氏が麻生氏に総裁選の支援を頼んだ時、『古賀氏と縁を切ってから来い』と言われたという話もある。その古賀氏に林氏は可愛がられていた。2012年に林氏が自民党総裁選に出馬した時も、古賀氏が後ろ盾になって推薦人を集めた。古賀氏は岸田首相の後継を林氏にしたいとの思惑で動いている。麻生派が協力して岸田政権を誕生させて間もないのに、古賀氏の子飼いである林氏を外相という重要ポストで起用する。麻生派の次の切り札でもある河野太郎氏が次期首相の座を狙うとなれば、林氏がライバルになることは間違いありませんからね。麻生氏はしてやられた感が強いようです」(麻生派の国会議員)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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林外相に安倍元首相が反発も?