左から甘利明氏、安倍元首相、岸田首相、麻生副総裁(C)朝日新聞社
左から甘利明氏、安倍元首相、岸田首相、麻生副総裁(C)朝日新聞社

 麻生氏以上、林氏に対し、反発が強いとされるのが、安倍氏だ。林氏の地元、山口3区は安倍氏の選挙区・山口4区の隣だ。安倍氏と林氏は共に世襲議員で父親の時代は、中選挙区制で同じ下関市が地盤だった。

 また、山口3区と4区は「1票の格差」問題で、早ければ次の衆院選で合区になるともいわれている。そうなれば、安倍氏と林氏が小選挙区の「公認争い」で激突する可能性もある。

◆安倍、麻生の「2A」を怒らせた岸田首相 

 安倍氏が実質、率いる清和政策研究会(清和会)の国会議員はこう言う。

岸田首相の次は林氏というのが岸田派の規定路線です。再々登板も視野に入れる安倍氏は、外相という華のあるポストに同じ山口選出の林氏が就き、台頭することを危惧している。また安倍氏は台湾と非常に近い関係です。一方、林氏は日中友好議員連盟会長で、中国との関係が深い。外交に対する政治姿勢が違うことも難色を示している理由です」

 安倍氏は中国と緊張関係にある台湾の蔡英文総統と友好関係にある。中国の圧力で、新型コロナウイルスのワクチン入手が困難だった台湾が頼ったのが、安倍氏だった。その尽力もあって、日本から今年6月にアストラゼネカ製のワクチンが台湾に届けられた。

 その台湾が加盟に名乗りをあげている環太平洋パートナーシップ(TPP)協定。安倍氏は台湾のTPP加盟を歓迎するツイートを9月23日に出している。

<自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する台湾の申請を歓迎します。蔡総統が全てのルールをクリアーするとの決意を示した事は、日本が支持する上で極めて重要です>

 これに対して、蔡英文総統も<日本の友人たちには我々のこの努力をぜひ支持して欲しいです!>と応じた。

 中国にとって最もセンシティブな問題の一つである台湾に対し、首相経験者の安倍氏が異例の肩入れをしているのだ。

 一方で、外相就任が内定した林氏は中国と良好な関係にある。

「中国もTPP加盟に名乗りを上げ、是が非でも台湾の加盟をつぶしたい。そのために、中国はTPP加盟申請をしたようなもので当然、日本の岸田首相の協力を得たいと考えています。林氏が外相になれば、その窓口となる。日本がTPPに参加したのは、安倍首相時代で現在の加盟国の中では日本は有力国の一つだ。その安倍氏の台湾推しは、中国にとって絶対に容認できないことなのです」(官邸関係者)

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意外に老獪な岸田首相の手腕