撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

――本書を読んで、「クイズ」そのものだけでなく「クイズ界」や「クイズ研」に興味を持つ人も多いと思います。伊沢さんご自身も「クイズ界」に育てられたと書かれていて、人間味あふれる温かさみたいなものも読み取れました。改めて、「クイズ界」というコミュニティならではの魅力を教えていただけますでしょうか。

伊沢:そもそも僕自身がクイズ界の構成要素の一つなので、クイズ界を総括することはおこがましいなと思うんですが、やはり多様性のあるコミュニティの中で、己の信じるクイズを各々が考え、貫くというのがクイズ界らしさなのかなと。スポーツみたいに明確なルールがあるわけではないし、集まりたい人たちで集まって、やりたいことをすればよい。クイズというくくりは、スポーツ名よりも広いというか、「囲碁将棋研究会」「ボードゲームサークル」みたいな感覚なんですよね。

 ボードゲームサークルの中で別のボードゲームをプレーしている集まりが複数あっても別に問題ないですよね。クイズ界というのはそれのでっかい版みたいなもので、各々が信じるクイズ像と、創作意欲、独自の知識なんかを、他人に侵害されぬまま楽しむことができる。これがクイズ界の在り方の良いところだと思いますし、そうあり続けてほしいですね。

――実際に、多くの諸先輩方がこの本の編集にも携われていますよね。

伊沢:感謝しかないですね。クレジットさせていただいた仲の良い先輩後輩はもちろん、クレジットできなかった人も、そもそも自分がメディアに立つために必要な土壌を作ってくださったり、ご指導くださったり、それこそクイズの理論を築き上げてきた人たちですから。僕はあくまで系譜の中にいる一パーツにすぎません。サークルで先輩におごってもらったときに「俺にはいいから、下の代におごってやれよな」って言われる感じというか。そういう感覚はずっと持っていたので、今回はそれが少しはできたかなと思います。

――「クイズそのものの面白さをありのままに書き残したい」「クイズのために書いた『クイズの本』」とおっしゃっています。昨今のクイズブームやご自身がCEO兼編集長を務められているQuizKnockの急成長に伴い、「クイズの効能とは?」や「クイズは何に役立つのか?」という風潮が変わってきている予感もします。まさに、発展途上であり、これからどんどん進化していく可能性がありますね。

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「クイズをやることはなにかのためにある行為ではない」