撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

「高校生クイズ」で史上初の2連覇を果たし、「東大王」や「QuizKnock」創設で日本のクイズ界を牽引する伊沢拓司氏。彼が2年半を費やした大著『クイズ思考の解体』では、クイズを愛しすぎた“時代の寵児”が、「クイズ本来の姿」を長大かつ詳細に、繊細だが優しく解き明かしています。本について、また、愛してやまないクイズについて、伊沢氏に語っていただきました。

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※「伊沢拓司『早押しクイズでの“誤答”は勝つための手段』クイズ王が分析するクイズの世界」よりつづく

――社業や芸能活動がお忙しい中、深夜に時間を作り孤独に耐えてご執筆を継続されたとお聞きしました。並大抵の精神力ではなし得なかったと思います。完成まで書き続けることができた、伊沢さんのモチベーションについて教えていただけますでしょうか。

伊沢:僕は単純に、文章で伝わる自己のイメージについて過度に気にしいなんだと思います。インタビュー原稿とかも沢山直しちゃうんです。本を書くときも、以前聞き書きでやってもらおうとしたこともあったんですけど、伝えたいことが上手く伝わらない文章になってしまっていたので頓挫してしまった。結局、自分の手で書いていないものが出るのは怖くなってしまったんです。

 写真とかは全然確認しないんですけど、文章についてだけは正直けっこう神経質で申し訳ないなと自分でも思います。それでもなお、やっぱり自分で書きたかったし、書いているときは煩悶の中に自己満足があったので、そこはエナジーを燃やし続けることはできましたね。

 書いたものが称賛されようと批判にさらされようと、一石を投じて何かしら状況をすすめることができるのであれば、それはとても幸せなことです。クイズをプレーする時間が執筆で減ったこととかは辛かったですけど、多くの人に協力してもらえたし、編集の松浦さんがずっと伴走してくださったので、孤独を感じることはなかったです。一人になれる夜の作業も好きですしね。

 書いていて寝落ちした日は10や20ではきかないかもしれませんけど、クイズのことを考えているうちに一日が終わるのであれば、それはとても幸せで平和なことです。ほんとは社会人としての勉強により時間を割かないといけないんですが(笑)。

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「クイズ界」というコミュニティならではの魅力