10月13日の阪神戦で4回表に同点に追いつかれ、顔をしかめながらベンチに戻る菅野智之。今季はキャリアワーストとなる6勝7敗に終わった(C)朝日新聞社
10月13日の阪神戦で4回表に同点に追いつかれ、顔をしかめながらベンチに戻る菅野智之。今季はキャリアワーストとなる6勝7敗に終わった(C)朝日新聞社

 投手陣でさらに大きいのがリリーフの柱である中川皓太とデラロサの復調だ。10月の成績を見ると中川は12試合に登板して1勝4ホールド、デラロサは11試合に登板して5ホールドをマークしており、ともに自責点0と完璧に仕事を果たしている。チームが大型連敗している状況でも、自分の役割をしっかりとこなし、シーズン最後に調子を上げてきたのは見事という他ない。この2人の活躍がなければ広島との3位争いにも競り負けていた可能性もあったはずだ。短期決戦でものを言うのはやはり安定した投手力であり、絶対的エースとリリーフの柱にめどが立ったというのは大きなプラスであることは間違いないだろう。

 打線は8月以降、深刻な得点力不足に悩まされていたが、数少ないプラス要因は丸佳浩が調子を上げてきたことだ。今年は不振に苦しんでいたが、10月は打率.361、6本塁打、11打点とようやく本来のバッティングを取り戻してきた印象を受ける。個人的には広島時代の2016年から6年連続でのクライマックスシリーズ進出となっており、短期決戦の経験が豊富なのも頼もしい限りだ。4番の岡本和真は安定しているだけに、その前を打つ丸がこの状態でポストシーズンを迎えることはヤクルト阪神の2球団にとっては大きな脅威となることだろう。

 冒頭でも触れたように過去のデータや今年の戦いぶりを考えると巨人の下剋上の可能性は低いと言わざるを得ないが、わずかながら光も見える。菅野以外の先発投手がここから調子を上げてくれば阪神、ヤクルトと互角に戦える可能性も十分にあるだろう。セ・リーグ連覇中のチームとして、最後までその意地を見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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