写真はイメージ (c)GettyImages
写真はイメージ (c)GettyImages

 コロナは自然からのリベンジ――先ごろ出版された『ポストコロナの生命哲学』(集英社新書)でこう語るのは、生物学者の福岡伸一さんだ。いま必要なのは「大人になる過程で忘れてしまった、子ども時代の感覚を思い出す」ことだと語る真意とは。「ピュシス」と「ロゴス」をキーワードに、教育ジャーナリストのおおたとしまささんが読み解いた。<後編に続く>

【開成中高の元校長が教える! 子どものやる気を引き出す4つのポイント】

*  *  *

おおた 『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』の執筆のためにインタビューさせていただいて以来ですね。

福岡 あれはいつのことでしたっけ?

おおた 2013年ですから、もう8年半も経つんですね。もうひとつ懐かしい話をすると、インタビューの後の雑談で、中学入試に出た「ドラえもんが生物でないと言える理由を述べよ」という問題についても盛り上がりましたね。

福岡 麻布の問題ですよね。

おおた はい。その雑談を福岡さんが週刊文春の連載に書いてくれました。問題文の中にウイルスは生物とは言えないとあって、これはかなり大胆な言い切りだと指摘されていましたよね。あの連載がのちにご著書『やわらかな生命』に収録されて、私の宝物です。

福岡 非常に素晴らしい問題でしたよね。いい先生がいるんですね。

おおた その、生物と無生物のあいだにいるような存在であるウイルスが、いま世界を大きく揺るがしているわけです。今回は福岡さんの『ポストコロナの生命哲学』(美学者の伊藤亜紗さんと歴史学者の藤原辰史さんとの共著)に出てくる「ピュシスの歌を聴け」というフレーズをさまざまに解釈しながら、ポストコロナにおける教育のあり方についても考察できればと思っています。

福岡 わかりました。

■「ロゴス」からこぼれ落ちてしまうものがある

おおた ご著書ではコロナ禍を「ピュシスからのリベンジ」と表現されています。そこで「ピュシス」と「ロゴス」がキーワードになっていますが、まずこの2つの言葉について、簡単に解説をお願いしていいですか?

次のページ