世界選手権はノーマルヒル3位でラージヒル2位だったが、ノーマルヒルは1本目にテレマーク着地をしっかり決めていれば優勝できた惜しい結果。さらにW杯総合も終盤には1位争いをし、最終戦7位で9ポイント差の2位という大接戦を演じた。

 それでも「世界選手権は惜しかったと言われるが、まだ空中ができていないのでテレマークが決まらなかった。助走に滑り出しから始め、R(助走路の角度が変わる部分)の滑り、そこから踏切までと順番に取り組んできたが、まだ空中は手付かずなので。いい条件なら着地までスムーズに行けるが、追い風などの難しい条件に対応できる空中のスキルはまだできていない」と冷静に振り返っていた。

 北京五輪の金メダル獲得へ向けてその取り組みを進めている高梨は、今年7月から10月までのサマーグランプリは、全7戦中4戦出場して1位1回、2位2回、3位1回で総合2位。優勝したチェコ大会と開幕のポーランド大会第1戦では飛型点も高得点を取り、改良の成果を見せている。

 世界の状況を見れば、昨季は大きな変動があったシーズンだった。平昌五輪シーズンからW杯総合を3連覇していたルンビは世界選手権でのラージヒルこそ優勝したが、W杯は表彰台無しで総合8位と低迷。前シーズンはルンビと総合1位を競り合ったオーストリアのキアラ・ヘルツェルとエバ・ピンケルニッヒも不調とケガで低迷し、20歳前後の若手が一気に力をつけてきたのだ。

 その中でも20年札幌大会で初勝利をあげた時に「昨シーズンは結果が出ないのでやめるつもりだった」と驚いていたマリタ・クラマー(オーストリア)は、19歳の昨シーズンはビッグジャンプを連発して7勝。新型コロナウイルスのPCR検査陽性で2試合出場できなかったが、それがなければ総合優勝は確実という勢いを見せていた。また高梨に競り勝って初の総合優勝を果たしたニタ・クリズナ(スロベニア)は20歳の選手だった。

 11月下旬からW杯が開幕する今季、五輪連覇がかかるルンビは「体重管理で無理をしたくない」と、シーズンの欠場を表明している。サマーグランプリでは26歳のウルシャ・ボガタイ(スロベニア)が高梨を抑え、7戦で1位4回、2位2回で総合優勝しているが、W杯10シーズン中で18~19年に3位が2回あるだけで、昨季も総合16位と未知数な部分は大きい。

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高梨の強さは“ベテラン”としての経験?