二階俊博元幹事長(右)と岸田文雄首相(C)朝日新聞社
二階俊博元幹事長(右)と岸田文雄首相(C)朝日新聞社

 14日、衆議院が解散した。臨戦モードに突入したが、二階派の議員の多くが窮地に陥っている。参議院から鞍替えした林芳正元文部科学相と山口3区で公認を争っていた二階派の重鎮・河村建夫元官房長官が引退を表明。その他にも小選挙区で公認を争っていた二階派の鷲尾英一郎氏(新潟2区)や細野豪志氏(静岡5区)が党から公認を受けられない事態になっている。自民党関係者からは「パワーバランスが崩れた」との声があがる。

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岸田首相に二階氏が降ろされてから、河村さんも弱気で『厳しいかも』と漏らしていた」

 こう語るのはある自民党幹部だ。山口3区では、文部科学相や農林水産相などを歴任した林芳正氏が、参議院から衆議院へ鞍替え。二階派の重鎮で官房長官などを務めた河村建夫氏と公認争いを繰り広げていた。河村氏は衆議院議長のポストも狙っており、選挙区は譲らないとみられていたが、14日、衆院選には出馬せずに引退する意向であると報じられた。先の幹部はこう語る。

「河村氏には降りるように何度も説得があったが、二階氏が幹事長ということでずっと強気だった。二階氏が降ろされたあとも本人は『もう1期は』とも話していたが、このままいけば保守分裂は確実。メディアに『内紛だ』と報じられイメージが悪くなる恐れがあった中で、党としては河村さんの英断に助けられた思いだ」

 引退の背景には林氏の選挙攻勢に追いやられた面もあるようだ。ある県議はこう語る。

「河村さんの後ろ盾である二階氏が幹事長を降りてしまったうえに、林さんは3区の県議をガッチリかためており、河村さんは四面楚歌(そか)に近い状況だった。林さんは今回が勝負とばかりに徹底して河村さんの人脈、票田に食い込んで切り崩していた。河村さんも応戦してはいたが、林さんの勢いに押されていた。ダメ押しが岸田政権誕生でしたね。衆院選で当選すれば、林さんは将来の総裁候補でしょうから。やっぱりそちらに流れますよね」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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