岸田総理への手紙(筆者提供)
岸田総理への手紙(筆者提供)

 しかし回答は、すべて「不開示」。まさにゼロ回答。岸田総理の答弁と同じだ。これより先、岸田総理は「裁判の中で、財務省として丁寧に対応するよう、私からも財務省に指示を出した」とも発言している。そこにこの回答、雅子さんもあきれた。

「丁寧に出した答えがこれです。何度も聞かされてきたフレーズです」

◆衆院選挙で最も重視するテーマ1位に森友問題

 ところが話はこれで終わらない。ヤフーニュースの中の「みんなの意見」というコーナーで現在、「衆院選、あなたが最も重視するテーマは?」というアンケート調査が行われている。12日の時点で12万人余が投票(締め切りは31日)。その結果を見ると…

1位…「森友問題の再調査」 3万2000人余 27.2%

2位…「外交・安全保障」 2万4000人余 20.5%

3位…「経済・成長戦略」 1万5000人余 12.4%

4位…「コロナ経済・補償対策」 1万人余 8.7%

5位…「憲法改正」 8000人余 6.8%

https://news.yahoo.co.jp/polls/domestic/42663/result

 森友再調査がダントツのトップ。普段なら選挙の最重要テーマになりそうな項目をはるかに上回っての1位だから、何か原因がないとありえない。

 この調査が始まったのは10月5日だ。その後、事態を大きく動かしうる出来事と言えば…6日に出した赤木雅子さんの“総理への手紙”しかないだろう。

 勇気を出して手紙を書いた。それがマスコミで大きく報じられた。国会の代表質問で全文が読み上げられ、その様子がNHKのテレビ中継で全国に流れた。代表質問2日目の12日、共産党の志位委員長も“総理への手紙”を取り上げた。共同通信の世論調査では「再調査すべき」という回答が6割以上を占めた。流れは今も続いている。

◆わずか1週間で”亡霊”を呼び覚ます

 国有地の巨額値引きと、取引を記した公文書の改ざん。森友事件は4年前に発覚し、3年前にまじめな公務員の命を奪った。

 その後、忘れられかけていた事件が今、“亡霊”のように蘇っている。それは犠牲者の妻、赤木雅子さんが出した“総理への手紙”がきっかけだ。わずか1週間で“亡霊”を呼び覚まし、日本中に共感が広がっている。奇跡の1週間だ。

 奇跡による“亡霊”の復活を怖れているのは、事件を“なかったこと”にしたい人たち。その筆頭が、安倍晋三元総理ではないか。

 手紙を出して1週間となるきょう13日、赤木雅子さんは大阪地裁で国と佐川氏を相手の裁判に臨む。翌14日に衆議院が解散。日本は総選挙に突入していく。多数の人々が支持する「森友再調査」が実際に選挙の最重要争点になれば、本当に“奇跡”が起きるかもしれない。

(相澤冬樹)

◆あいざわ・ふゆき NHKで31年、記者。現在は無所属で週刊文春、ヤフーニュースなど各種メディアに執筆。各地で取材・講演中。