このトレンドはサッカーだけではなく他競技にも広がっている中、野球中継も新たな時代を迎えている。パ・リーグは収入源の確保のため、07年に6球団の共同出資でPLM(パシフィックリーグマーケティング)を立ち上げた。12年に開設された配信サイト『パ・リーグtv』は大人気コンテンツとなり、設立から年間の売り上げは約30倍にもなるなど、今や野球中継もテレビではなく、ネットで見るコンテンツとなりつつある。

 セ・リーグでは巨人が19年からDAZNと主催試合の配信を含む包括提携契約を結んだ。当初は単年での契約だったが昨年、新たに5年契約に延長し直したと発表された。親会社である読売グループの日本テレビ系列テレビ中継で独占されていた巨人戦もネット配信の時代に移り始めた。

「DAZNとしては最終的にNPBとの一括契約を望んでいるはずです。現在は広島の主催試合など配信できない試合もある。オープン戦、CS(クライマックスシリーズ)、日本シリーズそしてWBC、日米野球まで、プロ野球関連の全コンテンツを手にすることで野球ファンの総取りを狙っているはず。その先には高校野球など、アマチュアも念頭にあるのではないでしょうか」(大手広告代理店関係者)

 DAZNとの契約によってNPB、各リーグ、球団は高額の放映権料を得ることができる。DAZNとしても契約者から毎月、定額の視聴料金が入ってくる。そして契約者はスポーツが好きな層という明確なマーケティングができるので広告収入も見込める。両者にとっては良いことだらけの契約。スポーツ以外の多くのコンテンツを扱うテレビ局から、DAZNなどスポーツ専門企業へシフトするのは当然の流れかもしれない。

「地上波スポーツ中継は年々、バラエティ路線に走っており不評を買うことも多かった。スポーツ好きにとっては集中して観戦できるので良いこと尽くしの時代になったと言えます。しかし一見さんやライトな層がお金を払ってまでスポーツ配信を見ることは考えられない。各競技のコア化が進んでしまい新規ファン獲得の阻害につながる危険性もあります。東京五輪も地上波で放送したことでマイナー競技にも多くの注目が集まったのは記憶に新しい」(在京テレビ局関係者)

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露出が減ると死活問題の競技も?