多くのリズムネタを輩出した「おもしろ荘」のMCを務めるナイナイの岡村隆史(C)朝日新聞社
多くのリズムネタを輩出した「おもしろ荘」のMCを務めるナイナイの岡村隆史(C)朝日新聞社

 数ある芸術の分野の中でも、音楽ほど人間の感覚に直接訴えかけてくるものはない。文芸は活字を読んで頭で理解しなければいけないし、絵画や彫刻もそこに目を向けないと味わうことができない。だが、音楽だけは受け手が何もしていなくてもじかに耳に入ってくる。瞬間的に人の心を揺さぶる力の強さでは、音楽の右に出るものはない。

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 お笑いのネタの中でも、歌や音楽を取り入れた「リズムネタ」は1つのジャンルとして確立しており、ハマったときの破壊力は抜群だと言われている。歌やダンスを取り入れたリズムネタは子どもが興味を持って真似をしたりすることもあるため、幅広い世代に支持されて爆発的に人気を博すこともある。

 だが、藤崎マーケットの2人は、そんなリズムネタの乱用に警鐘を鳴らしている。彼らは「リズムネタ撲滅キャンペーン」を行っていて、リズムネタに安易に手を出さないようにと戒める小冊子を芸人たちに配っている。

 9月6日放送の『なるみ・岡村の過ぎるTV』(ABCテレビ)では、そんな彼らが出演して、MCのなるみとナインティナインの岡村隆史にリズムネタの危険性を訴えていた。

 藤崎マーケット自身も、2007年に「ラララライ体操」というリズムネタで大ブレークを果たした経験がある。彼らは「ラララライ体操」はあくまでも自分たちの持ちネタの1つに過ぎないと思っていたのだが、世間ではそればかりが求められ、ほかのネタをテレビで披露する機会はなかった。

 しかも、一時のブームが過ぎてラララライ体操が飽きられてしまうと、テレビにもほとんど出られなくなり、いつしか彼らは「一発屋芸人」の烙印を押されてしまった。

 そんな自分たちの経験を踏まえて、同じような犠牲者を生まないために、彼らはリズムネタ撲滅運動を始めて、「リズムネタは劇薬」というメッセージを後輩芸人に伝えている。

 番組が進んでいくうちに明らかになってきたのは、岡村がリズムネタの普及に一役買っていることだった。一世を風靡したリズムネタ芸人の多くは、岡村が出演する『おもしろ荘』(『ぐるぐるナインティナイン』)や『めちゃ×2イケてるッ!』でネタを披露したことがきっかけでブレークを果たしていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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