昨年まで5年間DeNAの監督を務めたアレックス・ラミレス(ベネズエラ出身)は、選手として日本で14年プレーしたこともあって日本語もそれなりに堪能だというが、会見やインタビューに日本語を織り交ぜることはあっても、話すのは基本的に英語。日本語のみで会見に応じるということはなかったものの、それを批判されたことはない。

 それではメジャーリーグでプレーする、日本人以外の外国人選手はどうか? 思い出すのは20年ほど前の日米野球で、MLBオールスターのベンチで手持ちぶさたにしている選手に英語で話しかけた時のこと。その選手が黙ったまま少し困ったような表情を浮かべていると、関係者がやってきてこちらに「君はスペイン語を話せるか? 彼は英語を話さないんだ」という。ハローに相当する「オラ」ぐらいしか知らない筆者は、そこでおとなしく引き下がった。

 その選手こそが、前年までインディアンスで4年連続2ケタ勝利をマークし、この年はシーズン途中でエクスポズ(ナショナルズの前身)に移籍して20勝を挙げていたバートロ・コロン(ドミニカ共和国出身)だった。彼はその10年後、今度はアスレチックスの一員として東京ドームで行われる開幕戦のために来日し、都内で開催されたイベントに出席する。

 イベントはトークショー&サイン会と銘打たれていたのだが、最初の2人のトークが終わってコロンの順番になっても、無言で笑みを浮かべるばかり。その後のサインには快く応じたものの、最後まで一言も口にしないまま会場を後にした。おそらくは当日の通訳がスペイン語に対応していなかったのだろう。

 今季の開幕時点で、メジャーリーグには20の国と地域で生まれた256人の選手が在籍していて、その大多数を占めるのがスペイン語を母国語とする中南米出身者である。彼らは早ければ16歳でメジャー球団と契約を結び、マイナーリーグ時代に英会話を学ぶので、メジャーに昇格する頃にはある程度の英語を話せるようになっていることが多い。一方でコロンのように、何年経っても英語を話さない選手もいるし、日常会話には困らなくてもインタビューなどの公の場では通訳を介するという選手もいる。

次のページ
スミスはなぜ、大谷だけを名指ししたのか?