アーティスティックスイミングのチーム種目は4位でメダルに届かず (c)朝日新聞社
アーティスティックスイミングのチーム種目は4位でメダルに届かず (c)朝日新聞社

「今まで泳いできた中で、一番自分たちでも手応えもありましたし、何より一番楽しかったです」

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「私たちの曲には声が入っているんですけど、その自分たちの声と、そして『今オリンピックで泳いでいるんだ』という気持ちと、どんどん高まってきて、本当に今までで泳いだ中で一番楽しかったです」

 デュエットを泳ぎ終えた時には声も出ないほど疲弊していた吉田萌が、チームのフリールーティンを泳いだ後にテレビのインタビューで口にした言葉だ。アーティスティックスイミングのチーム種目で、日本はデュエットに続いて4位となり、メダル獲得はならなかった。しかし、「祭り」をテーマにしたルーティンを精一杯泳ぎ切った選手達の表情には、清々しさが漂っていた。

 シンクロナイズドスイミングからアーティスティックスイミングに名称が変わってから、初めて迎えるオリンピックとなった東京五輪。日本は、同調性だけでは点数を得られなくなった採点基準の変化への対応に苦しんだ。「特に今回の大会は苦しい点数だったのですが、今まで自分たちがやってきたことをこの舞台で出せたらいいのかなと思って、そういう気持ちで今日は泳ぎました」という吉田のコメントは、日本の選手たちの思いを代表するものだろう。

 この五輪でも日本を率いた井村雅代ヘッドコーチとともに、黎明期から日本を支え続けた金子正子元日本水泳連盟シンクロ委員長は、この東京五輪で「歴史的な、大きな様変わり」を見たと話す。

「すごく勉強になりました。ここで、変わりつつあるものが変わりましたよ。模索していたものが、東京オリンピックで仕上がったということですよね。方向性がはっきり決まってきた」

「アーティスティックスイミングという名前になったところで、本当にスポーツもアートであるというような限界への挑戦が、これからアーティスティックスイミングの進んでいく道なんじゃないかな」

 3年後のパリ五輪に向け、すぐにでも動くべきだと金子氏は語る。

「いろいろなものを多角的に、体から表現するトレーニングを早速始めていかなければいけない。芸術スポーツということをみんなで多角的な面から探った方がいいと思うし、いろいろな方を呼んでディスカッションした方がいいと思うんですよ。今日本にも若い人たちの舞台舞踊がいっぱいあるから、そういうものを試してみたらいい」

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