「遠山氏は19年から1年間、財務副大臣だった。その影響力を背景にしたのか、2人の元秘書を通して、テクノ社に政府系金融機関の融資を口利きをした疑いがある。 遠山氏自身も2人の秘書に『政府系金融機関を紹介させた』と認めている。テクノ社以外にも数百の融資をあっせんした疑惑もある」(捜査関係者)

 遠山氏は議員辞職した後に、今年3月に東京都に自身が社長の遠山アソシエイツ・コンサルティング・インタナショナル(以下T社)を設立。東京地検特捜部は今回、T社や福岡市の遠山氏の自宅にも家宅捜索に入っている。遠山氏は5日までに時事通信のインタビューに応じ、財務副大臣在任中の19~20年、「300社ほどの企業に日本政策金融公庫の窓口を紹介した」と語り、当時の秘書らが公庫担当者を企業などに紹介していたことを認めている。

 特捜部の強制捜査は政治的への影響を考慮し、とりわけ選挙には敏感だ。

「解散総選挙が見えているような時期に、特捜部が独自捜査で議員会館にガサに入ったというのは並大抵のことではない。貸金業法違反という容疑はまさに入口。遠山氏はすでに辞職しているので、狙いはより大物の国会議員ではないか」

 こう解説するのは、元東京地検特捜部の落合洋司弁護士だ。今回のような強制捜査が行われた背景には、7月にあった検察庁の人事異動が関係しているという。東京地検特捜部長だった森本宏氏が津地検検事正から東京地検次席検事に着任したのだ。森本氏は特捜部長時代、日産自動車のカルロスゴーン被告や衆院議員の秋元司被告のIR疑獄事件を手掛けた「切れ者」と知られる。

「森本氏は特捜部長時代、あれだけガンガンと事件をやり実績をあげた。昔、森本氏とは静岡地検で1年間、一緒に仕事をしたが、とにかくイケイケで積極的です。森本氏が次席検事で戻ってきたことも今回の強制捜査に影響していると思う」

 東京地検特捜部の本当の狙いはどこにあるのか?自民党幹部はこうため息交じりに話す。

「東京地検特捜部のガサは、永田町には大きなプレッシャーだよ。支援者から融資の相談があれば、窓口紹介をすることはちょくちょくありますから…。これが入口だとすれば、もっと大物を狙っているのではないか。次にどこにガサに入るのか。戦々恐々だ」
(AERAdot.編集部 今西憲之)

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら