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菅義偉首相が最後までこだわり続けた「有観客開催、そして大会成功で内閣支持率をアップさせ、衆院選で大勝」という野望が7月8日夜、ついに崩れた。
ここに至るまでのターニングポイントは3つあった。まず1つ目は政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の存在だ。
7日の衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、東京五輪・パラリンピックの開催について、現在の感染状況では医療逼迫(ひっぱく)の恐れがあると指摘。そのうえで、開催については「無観客が望ましい。大会関係者も最小限にすることが重要だ」と菅首相にダメ出しをした。
尾身会長はこれまで国会で何度も東京五輪開催での感染拡大リスクを訴えたが、菅首相は無視し、「有観客上限1万人」に舵を切った。しかし、その後、重大な失敗をしたという。官邸関係者がこう明かす。
「実は尾身会長は数度にわたり天皇陛下に現下のコロナの厳しい状況についてご進講を重ねています。陛下は科学で事象を捉える方ですから、尾身会長の科学的でロジカルな説明を理解し、またその上で心を痛めたと聞きます。一方、菅首相の内奏は、いつもの如く、『安全安心』『とにかくワクチン』『人類がコロナに打ち勝つ証』といった科学的でもなければ、心に訴えかけるものでもない、例によって壊れたテープレコーダーのような話ばかり。陛下が理解と共感を示されなかったことは想像に固くありません」
こうした背景があって宮内庁長官の『拝察』発言があったという。
「拝察は長官の発言に過ぎない、と菅首相は火消しを図りました。しかし、裏腹に陛下がこのままでは開会式に出席されないのではないか、という焦りが官邸にあったのは事実です」(同前)
尾身会長の説明が菅首相を上回ったのだという。
2つ目は、小池百合子東京都知事の存在だ。東京五輪で「有観客上限1万人」に固執する菅首相を横目に、丸川珠代五輪担当相、大会組織委員会の橋本聖子会長らに先んじて「無観客」に舵を切った。