そのターニングポイントが、小池知事が退院翌日(2日)に突如、開いた記者会見だ。小池知事は東京五輪開催について「無観客も軸に」と踏み込んだ発言をしたが、メディアはスルー。

 しかし、官邸は「遂に勝負に来た」と感じたという。そして小池知事はその翌日、東京都議選に電撃参戦し、「無観客」を掲げる都民ファーストを一気に浮上させた。しかし、小池知事は選挙戦の応援では沈黙。無観客を政局化しなかった。

「もしも小池さんが都議選前に無観客を全面に出して動いたらたちまち政局になっていた。選挙後を待って一気に動いたのは戦略的でした。小池さんは投開票の翌日(5日)、自民党の二階俊博幹事長、公明党の山口那津男代表とそれぞれ面会し、5者協議を控え、無観客の大きな流れを作った。さらに7日には小池さんと尾身会長は電撃面会し、官邸の度肝を抜いた。話し合いは2時間近くにも及んだそうです。コロナ対策への意識共有と、緊急事態宣言下での五輪開催のあり方に関する認識の調整がなされた。いちばん重要な局面で、2人が面会しタッグを組んで菅首相、組織委、IOCを追い詰めた」(自民党幹部)

 3つ目のポイントは小池知事と尾身会長という巧者の電撃的なタッグだったというのだ。菅首相は小池知事に遅れること2日後(7日)、慌てて二階幹事長と会食した。

「ワクチン一本でいきたい」「ワクチンをしっかりなるべく早く提供する」といつものフレーズを菅首相は述べ、二階幹事長も「政治も政局もすべてワクチン」と応じたという。

 だが、肝心のワクチンは数が足りないうえ、新型コロナウイルスは再び、感染拡大。7月12日から4回目の緊急事態宣言を再発出するなど失政が続く菅首相。自民党内でも厳しい声が上がっている。

 野田聖子幹事長代行は「菅政権になってから、東京都議選も負けってことを認めれば、全部負けている。知事選で推薦した方も、参院補選も負けている」と批判した。下村博文政調会長はコロナ禍での「10万円給付をやるべき」と声をあげた。

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自民党で湧き上がる「小池新党」待望論