テレ東で制作者として頭角を現した高橋さん。数々の人気番組を生み出す原動力となった「1秒でつかむ」ための32の技術を自著で惜しげもなく披露している。

―いわば企業秘密を明かしているとも言えますね?

管理職としてディレクターを育てる仕事もしている中で、ひとりひとりに同じ説明をするのが手間なので、単純にマニュアルを作ろうと思って書いた本です。マニュアルも作れてお金ももらえる一石二鳥がホントのところです。

―「自分取り調べ力」、「は?を消す力」、「うんこ漏らす力」に「自分の欲望肯定力」…。著書で披露している秘伝の技術は一見するとユニークなものばかり。大切な芯とは?

こだわるのは「バランス」なんですよ。ナレーションとか絵が全部整ってこそ、面白さを生むんです。そのバランスが崩れると一瞬にして面白くなくなるような笑いとか美しさが面白さのポイントです。配置とかバランスとか全体像の美学があって。細かい世界観に徹底的にこだわって番組の魅力を高めています。自分の世界観や価値観が一変したと感じたのは「ジョージポットマンの平成史」(架空の米国人教授が外国人の視点から現代日本を考察する番組)という番組を立ち上げた時。自慰の歴史を取り上げるにあたって調べていたら、かつて大学教授らによる「オナニー論争」があったんです。要するに自慰は悪か善かみたいな。こういう論争があったと知ると、いま良くないとされる倫理が崩れる。逸脱の境界に居る人、歴史上・宗教上の都合、個人の好みの問題で良くないとされているだけで、自慰が相対化できると学んだ時に価値観が変わりましたね。

―今後、テレビはどうなる?

利便性が高いネット動画に一層シフトしていくと思う。プラットフォームとしてのテレビ局の優位性はなくなる。唯一テレビが優位なのは、娯楽が少ないという人に楽しみを提供できること。無料ですしね。テレビのコンテンツ供給の優位性はまだまだあります。

―東京五輪についてテレビマンとして思うことは?

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テレビにとって東京五輪とは?