―――若者文化、犯罪など、ノンフィクションで影響を受けた作品はありますか。

 磯部涼さんが中学生殺人事件を軸に描いた『ルポ川崎』、打越正行さんの沖縄の若者を描いた『ヤンキーと地元』です。鬱屈した、閉鎖的な状態の若者を描いた作品として強く印象に残っています。『万事快調』の描写に生きています。

―――影響を受けた映画はありますか。

 自分に合った最初の映画といえば、深作欣二監督の『バトル・ロワイアル』でしょうか。あの不条理さとスピード感がなんとも言えません。アメリカ映画『バニシング・ポイント』のラストシーンでは自動車が猛スピードで警官隊の壁に突っ込んでいきます。ラストの一瞬で物語が全部いっきに終わるという、文字どおりのスピード感。こういう終わり方がすごくスマートでいいなあ、と思いました。

―――次回作は何をテーマにしようと考えていますか。

 未定です。いま新しく小説を発表する理由があるもの、語るべきテーマをエンタメとして昇華できるものを考えています。

―――作品をどのような人たちに読んでほしいですか。

 幅広い世代に読んでほしい。なかでも生きていて不満、不安を抱えている中高生には楽しい気分を味わってほしいですね。

―――最後に中高生、大学生など若い人に向けてメッセージをお願いします。

 みなさんが不満、怒り、鬱屈を感じているとしたら、その感情は絶対に間違っていません。いまの世の中に、そういう感情を剥奪しようという風潮は間違いなくあります。そういったものに屈せず、希望は捨てないでほしい。そのためには多少羽目をはずしていいでしょう。大人が「自分のおかれた場所で咲きなさい」といいますが、それは嘘だと思います。自分の行きたいところに行くべきです。人生は1回しかないので、自分の意志を最後まで貫いてほしい。

(構成/教育ジャーナリスト・小林哲夫