さらに内村は、本人も気付いていない他者の長所や特長、よさを見いだし、言語化する能力にもたけている。実際、彼の言葉が、周囲の人間が「自身の長所」に気づきを得るきっかけになっているケースもあるという。


 
 内村と長く番組を共にするお笑い芸人・いとうあさこ氏もそんな経験をした一人。
 
 今でこそテレビで見ない日はないほどの活躍をみせている彼女だが、まだ世に出る前から、同性のお笑い芸人の活躍に嫉妬や焦りをまったくといっていいほど感じたことがなかったという。
 
 当時はまだ「女芸人」と呼ばれる仲間たちの人数も少なく、いとう氏よりずっと後輩で、テレビに出ずっぱりの者もいた。切磋琢磨(せっさたくま)が求められる業界だが、彼女は「みんなおもしろいなぁ」とその活躍を心から応援していた。
 
 それから何年もたち、『世界の果てまでイッテ Q!』(日本テレビ)で、「女芸人」回の収録があったときのこと。12人の女芸人がスタジオに一堂に会した際、内村がカメラが回っていない時にみんなを見て、「すげーな、誰もかぶんねぇな」とボソっと口にした。それをたまたま近くで耳にしたいとう氏は、人知れず大興奮したそう。

「あー、そういうことだったんだな、と自分の深層心理を言葉にしてくれたように感じました。そうか、みんな、かぶってないから焦ってなかったんだ、と。もちろん似ている部分はあります。でも似て非なるもの、というか。それぞれがそれぞれで。だから別に誰が選ばれ、自分は選ばれなかったとか一つの仕事で慌てなくていいし、みんな違うんだから、それでいいんだよね……もうウッチャンそれそれ! って(笑)」
 
 内村にしてみれば、見て感じたことをシンプルに口にしただけなのだろう。だが内村が率直に言語化してくれたことにより、いとう氏は、これまでどおり自分らしく頑張ればいいのだと、エールを送られた気持ちになったそうだ。
 
 そしてもうひとつ、他人のパフォーマンスに素直でいられる内村は、「才能を持った」おもしろい人間を見つけるのも圧倒的に早い。事実、内村の番組出演をきっかけにそのおもしろさを世間へと知らしめることになった共演者も多くいる。

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部下の才能やパフォーマンスに「素直」になる