東京新聞の望月衣塑子記者(撮影/小山幸佑)
東京新聞の望月衣塑子記者(撮影/小山幸佑)

 菅義偉首相にとって、初となった6月9日の党首討論。菅氏が官房長官時代、会見でバトルを繰り広げた東京新聞記者の望月衣塑子さんの目にはどのように映ったのか、話を聞いた。

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「党首討論を見て、私はモヤモヤ感だけが残りましたね。相変わらず覇気がなく、明確には何も言ってない。ああいう場面では特に緊張するし、しゃべるのが苦手なんだと思います」

 望月さんには、菅首相の発言でひっかかったくだりがある。それは立憲民主党の枝野幸雄代表が「オリンピックの開催を契機として国内で感染が広がるのではないか」という質問に対する答えだった。

 菅首相は57年前の1964年の東京オリンピックのころ、自分は高校生だったと言って、回想を始めたのだった。東洋の魔女と呼ばれた女子バレーボールの選手の回転レシーブや、男子マラソンで金メダルに輝いたアベベ選手、柔道のヘーシング(オランダ)が日本柔道を初めて国際試合で負かしたこと「あの瞬間というのは、私はずっと忘れることができなかったんです。そうしたことを子供たちにもやはり見てほしい」と語った。

「私の子供は今、小学生です。オリンピックに全国の公立の小中高校生が128万人、都内の公立小中高校の生徒81万人が観戦する計画は、現時点で撤回されておらず、教員らによる『集団下見』も実施されました。菅さんは『五輪を無観客にはしたくない』という思いが強いと聞きます。あの発言は、この児童・生徒の学校連携観戦を何としてでも遂行するという意味を込めているのかと感じました」

 児童・生徒の学校連携観戦計画に対して、望月さんはこう警戒する。

「地球温暖化が進んでいているので、真夏の観戦や屋外での移動には熱中症が心配です。しかもコロナ禍で、ワクチンを打ってない子どもたちが集団で観戦する。そのリスクを考えると、親の立場としては集団観戦なんてことはやめてほしいと思います」

 望月さんによれば、菅氏が身につけている話法は『質問に答えない』『論点ずらし』『平気でウソ』なのだという。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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玉木氏は食い下がったが、座ったまま