加藤さんは著書『ミス東大加藤ゆりの 夢をかなえる勉強法』(中経出版 2009年)のなかで、英語の勉強法を紹介している。

「ガタンゴトンと揺れて心地よい眠気を誘う電車の中で、毎日単純な英単語の暗記を続けられた秘訣は、日付だと思っています。まず、だいたい2~3ページ、単語帳の中で、その日覚えるページを決めます。そして、そのページの単語を覚えて、赤いシートで隠しながら自分でチェックして、覚えたと思ったらそのページに日付を書きます。いってしまえばそれだけなのですが、これが意外とはまります。ちなみに単語帳は高校で指定されていた『速読英単語』(Z会出版)を使っていました」

 2004年、東京大理科二類に進んだ木村美紀さんは、ビートたけしの教養系番組『たけしのコマネチ大学数学科』(フジテレビ系)にレギュラー出演していた。東京大に合格した妹との共著『東大姉妹の合格勉強術』(集英社 2011年)で英語、数学の勉強法をこう伝える。

「英語の復習に役立つ、自分専用辞書と言えるノートを作ろう。カラフルなペンでその時点での学習状態を可視化する」

「数学は暗記ではなく、理解すること。苦手なら、ひとりで悩まずエキスパートに助けを求めよう。わからないことは、いい塾を探してそこで学ぼう」

 桜雪さんという、自称「地下アイドル」がいた。桜さんは、2012年、東京学芸大学附属高校から河合塾で1年浪人し、東京大文科三類に合格する。高校在学中から「桜雪の東大一直線娘」というブログで受験生活を綴った。1日10万PVを稼いだこともある。

 桜さんは著書『地下アイドルが1年で東大生になれた! 合格する技術』(辰己出版 2016年)で数学の勉強法をこう説いている。

「いろいろな問題にチャレンジするのではなく、ひとつのテキストを何周も解くことで、解答パターンを体に覚えさせました。何周もしていると、体が勝手に動くというか、問題を見た時に、『この問題はこういう方針で解こう』という、ゴールまでの道筋が浮かぶようになります。数学には部分点があるので、結局答えが出なくて完答できなかったとしても、考え方が間違ってなければ点をもらえることがあります。だから、パターンを理解して方針を立てられるようになるのが大切」

 東大アイドルたちの東大合格体験記を眺めると、みなオーソドックスである。基本を重視し、地道にじっくり勉強に取り組んでいる。奇をてらうようなことはしない。共通しているのは、自分に合った勉強方法を探し出したことだ。

 たとえば、数学をマスターするために木村美紀さんは「暗記ではなく理解」につとめた。桜雪さんは「解答パターンを体に覚えさせました」。2人の勉強法は、理解か、暗記かで異なる。大学受験業界でよく議論されるテーマである。これについて、合格という結果が出れば、自分に合うほうを選べばいいのではないかと教える予備校講師もいる。

 東大アイドルたちの勉強法をまるまるマネしたところで消化不良を起こしかねない。数ある勉強法を模索しながら、もっとも自分が取り組みやすい、そして模試で結果が示される勉強法を見つけ出す。それが合格への近道だろう。

 東大アイドルたちの受験に対する取り組み、考え方が少しでも参考になれば、彼女たちも喜ぶはずだ。

教育ジャーナリスト・小林哲夫