容姿ネタを「非常に難しい」と松本人志(C)朝日新聞社
容姿ネタを「非常に難しい」と松本人志(C)朝日新聞社
「容姿ネタ封印」を書き込み/3時のヒロイン福田麻貴の公式Twitterより(@fukudamaki)
「容姿ネタ封印」を書き込み/3時のヒロイン福田麻貴の公式Twitterより(@fukudamaki)

 最近、芸人が人の見た目をいじるような「容姿ネタ」の是非がたびたび話題に上っている。ネット上でこのことについて意見が交わされるきっかけになったのが、3時のヒロインの福田麻貴が自身のツイッターで「容姿ネタをやめる」という趣旨の書き込みをしたことだ。

【3時のヒロイン福田の書き込みはこちら】

 4月8日に彼女は「この数週間で容姿ネタに関してじっくり考える機会が何度かあって、私達は容姿に言及するネタを捨てることにしました!」と書いた。

 この書き込みの内容を受けて、4月18日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)では福田がゲストに招かれ、松本人志、兼近大樹らと意見を交わした。

 福田は、容姿をいじるネタが舞台でウケなくなってきていると感じているため、自分たちのネタの中ではそれを封印することに決めたと説明した。それを聞いて松本は「今そういう考えになってるならそれでいいと思う」と福田の意見を尊重しつつ、ずっとその考えにこだわる必要はなく、また変えてもいいと思うと語った。

 兼近は、上の世代の人が笑ってくれるから、サービスのつもりで人をいじる笑いをやっていたと告白。さらに、お笑いをサーカスにたとえて、一般人がプロの芸人と同じことをやろうとしたら怪我をすることになると語った。そんな今のお笑いについて「変わらないでほしい」と希望を述べていた。

 容姿ネタの件は、単純な是か非かでは片付けられない複雑な問題であると思う。誰もが認める笑いの権威である松本が「非常に難しい」と言わざるを得ないくらい、ややこしい論点が含まれている。

 この話題について「いったい何が難しいんだ。人の容姿を蔑むようなネタをやっていいわけがないだろう。すぐにやめるべきに決まっているじゃないか」という考えの人もいるかもしれない。そういう人にとっては、芸人たちがなぜそのようにはっきり言ってくれないのか、煮え切らない議論を続けているのか、何にこだわっているのか、ということが今ひとつ見えてこないのではないだろうか。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ
松本人志は芸人にとってのネタをボクシングにたとえたが