※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部部長 竹原健二
国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部部長 竹原健二

 産後うつが、父親に起こることもある。そう聞いて驚く人は、自分のもつ出産・子育てに関する知識を更新する必要がありそうです。産後の父親のメンタルヘルスには、長時間労働など厳しい社会的環境が影響しています。

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 生後1歳未満の子どものいるふたり親世帯3514世帯についての調査で、産後1年間に父親が「メンタル不調のリスクあり」とされた割合は11.0%で、母親の10.8%と同程度でした。

 また、夫婦が同時期に「メンタル不調のリスクあり」とされた世帯は3.4%で、これを2019年の出生数約86.5万人に当てはめると、夫婦が同時期にメンタル不調に陥っている可能性のある世帯が「3万世帯弱」と推計されています。

 調査をおこなったのは、国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部の竹原健二さんのチームです。竹原さんによると、以前から、父親の産後のメンタル不調についての研究がおこなわれていましたが、全国的な実態、しかも父親だけでなく夫婦の実態を明らかにするために、「国民生活基礎調査」の2016年のデータを用いて調査したそうです。

 父親のメンタル不調には、家事・育児や母親サポートが父親に当たり前に求められるようになったものの、長時間労働の是正が進まないなど、産後の超多忙な生活が影響していると竹原さんは指摘します。

 郊外に住み東京都心に通勤しているある男性に、一日の生活の様子を聞きました。

 仕事が終わり帰宅するのが夜の22時ごろ。その後、台所の洗い物、衣類の洗濯などの家事をおこない、自分の入浴などが終わると、すでに0時過ぎ、就寝するのは1時過ぎになるそうです。翌朝は5時に起床して、朝食の準備、ゴミ出しの準備などの家事と子どもの世話をして、出勤。慢性的な睡眠不足だといいます。休日も以前のようにまとまった時間をとれず趣味の釣りにもいけないため、子どもはかわいいものの、たまには気晴らしをしたいと感じています。

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