前述のとおり、昨年の村上は打撃3部門ですべてベスト5入り。これはセ・リーグでは彼1人しかいない。この春のオープン戦で残した数字を見ても、杉村コーチのいうとおり、三冠王の可能性は大いにあると言えそうだ。

 新人の頃から身長188センチ、97キロという恵まれた体格で、スイングスピードが際立っていた村上は、高卒1年目の2018年にイースタン・リーグで打率.288(3位)、17本塁打(2位タイ)、70打点(2位)というハイレベルな成績を残した。筆者も取材に訪れた7月24日の西武戦(戸田)では、第1打席でライトへ豪快な一発を放つと、第3打席でもライトの防球ネットに突き刺さるようなホームラン。さらに第4打席では左対左を苦にせず左中間にヒットを打ったのを見て、とんでもない18歳だと思った覚えがある。

 19歳で迎えた2019年シーズンは、開幕から一軍でレギュラーとして起用されると、高卒2年目以内の選手では歴代最多に並ぶ36本塁打、そして新記録となる96打点で新人王を獲得。一方で打率は規定打席以上でリーグワーストの.231、三振は日本人選手としての記録を更新する184に上った。それが一転、昨年はシーズンを通して常に3割を超える打率をキープしたのだから、本当に驚いた。

「(打率が上がった要因は)広角に打ち始めたっていうことですよね。もともと広角に打つバッターなんですけど、やっぱり逆方向に打てば打率は残りますので。(今年も)センター中心に、引っ張って、流して、広角に打てばいいんじゃないですかね、今までどおり」

 ただし、打率は3割を超えたものの、120試合制とはいえ本塁打は30本に届かなかった。「今までどおり」に加え、今年は「やっぱり大きいのを打つにはどうしたらいいかっていうことで、右足を軸にしっかり飛ばすということを中心にやっています」と杉村コーチはいう。村上自身も、3月14日に神宮球場で開催された「出陣式」で「今年はタイトルを取れるように、シーズンの最初から意識してやっていきたいと思います」と話したとおり、打撃3部門のタイトル獲得に強い意欲を見せている。

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最年少の三冠王の可能性は?