プロ野球史上、1リーグ時代の1938年秋の巨人・中島治康を筆頭に、2004年のダイエー(現ソフトバンク)松中信彦まで7人の三冠王が誕生しているが、最年少は1982年に28歳で獲得した落合博満(ロッテ)である。もし、2月で21歳になったばかりの村上が三冠王になれば、この最年少記録を大幅に更新することになる。

 カギを握るのは、1人は新加入の内川だろう。ソフトバンクに在籍していた昨年は一軍出場の機会がなかったが、このオープン戦では全試合に五番打者として出場して打率.310をマークするなど、ベテラン健在をアピールした。

 昨年のヤクルトは五番バッターに計12人を起用したものの、合わせて打率.234は打順別では九番、八番に次ぐ低い数字であり、なかなか機能しなかった。いきおい四番の村上は勝負を避けられることも多くなり、本塁打や打点争いでは不利な状況にあった。

 しかし、五番にセ・パ両リーグで首位打者になった希代のヒットマンが控えていれば、相手バッテリーも簡単に村上を歩かせるわけにはいかなくなる。そうなれば本塁打も打点も増える可能性が出てくる。

 もう1人のキーマンは、今年からキャプテンに就任した山田だ。昨年は下半身のコンディション不良もあって不本意な成績に終わったが、2015年には最高出塁に輝き、通算でも4割近い出塁率を誇る選手である。今年も上位を打つであろう、その山田が本来のパフォーマンスを取り戻せば、村上にとって打点を稼ぐチャンスは昨年以上に増えることになる。

 もっとも、村上自身は何も数字のため、タイトルのためだけにプレーするわけではない。「出陣式」で「今年はチームのためにたくさん打点を挙げて、勝ちたいと思います」と話したように、目指すはあくまで四番としてチームを勝利に導くことだ。

 初めてレギュラーとしてプレーした2019年から、チームは2年連続で最下位。その中で、ファンにとって常に希望の光だったのが村上だが、本人としてはどれだけ良い成績を残そうとも、悔しい思いでいっぱいだったことだろう。

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「ビッグマウス的なぐらい前向き」