カーティス:ママ友同士で助け合えることはありますか?

小野医師:コロナ禍では人間関係の緊張が起きていますが、そういう時こそ気軽に育児の話ができる存在がいると心強いと思います。子育て中のママ同士だから話せる子育てあるあるに笑って共感してもらえるだけで、肩の荷が下りますよね。学生時代の友人は、キャリアや結婚観、子どもの有無など状況が様々で価値観が違うと共感しづらい部分もありますから。ただ、ママになったばかりのタイミングは精神的に不安定な時期です。それまでに仕事でキャリアを積んできた人も、子育てでは1年生。自分のアイデンティティーがゆらぐと、人と比べてしまいがちです。SNSでママ友のキラキラ系の発信を見て落ち込んでしまう人もいるので注意が必要です。

カーティス:本人や家族以外にも自治体レベルで改善すべき点もあると思います。私は2人目の出産後は自治体の派遣型一時保育サービスを利用しようと考えているのですが、まず1時間に及ぶ説明会に出席しないとサポートの方を探してもらえない仕組みなんです。しかも定員15名のみで月1回しか開催されません。自治体の制度が用意されていても手続きが煩雑なケースが多く、実際の支援を受けられるまでに時間がかかる印象です。産後うつ病を減らすために、どのような課題があるとお考えでしょうか?

小野医師:現時点ですぐにでもできそうなことは補助金の充実です。その際は世帯主への現金給付ではなく、家事代行や家庭内保育など具体的に育児のサポートにつながるものにしてほしい。妊婦検診時のクーポン券のような形がいいですね。Go Toキャンペーン予算の10分の1もあれば、ひとり親の困窮世帯が救われます。また、極論は「夫がちゃんと育児をする社会」を目指すことです。「育児・介護休業法」の改正で、男性も申請すれば子どもが1歳になるまで1年間の育児休業取得が可能になりました。でも取得率は2014年2.3%、2019年7.48%と伸び悩み、政府が2020年までに目標としていた13%には到底及びませんでした。背景には、申請を企業が拒否しても罰則がないことや、休業中の所得を企業や国が補償しているわけではなく、「育児休業給付金」を受け取るための手続きが煩雑なことなどが考えられます。休業制度の使いやすさと合わせて、育児ができる父親になるための制度も作る必要があります。男性が育児や家事を「手伝う」という考え方ではダメ。家族の一員として育児や家事を担うという意識を高めるため、例えば育休を取る男性には、沐浴やおむつ替えなどの産後指導の受講を必須にしてはどうかと、個人的には思っています。仕事ができる男性なら、家事も育児もできるはずです!

(構成/高丸昌子)

◆プロフィール
おの・ようこ/産婦人科医・心療内科医。日本産婦人科学会専門医。女性ヘルスケア専門医、日本女性心身医学会認定医など。2011年岩手医科大学医学部卒業。聖路加国際病院女性総合診療部を経て、2016年より東邦大学心療内科勤務。現在、東邦大学大学院心身医学講座に所属しながら、対馬ルリ子女性ライフクリニックにて診察。また、「Addots Ginza」代表として「女性のこころとからだの相談室」を開設予定。「産婦人科オンライン」などでもオンライン相談を受け、女性の心と体を支える。

かーてぃす・ゆうこ/1989年生まれ。ニューヨークを拠点に、3歳の息子、アメリカ人の夫と暮らす。大学卒業後、東京の外資系金融に入社し、その後ニューヨーク本社に転勤。育休中に近所で気の合うママ友がなかなかできなかった自身の経験から起業を決意し、2019年10月にママ友マッチングアプリ「MAMATALK」をリリース。MAMATALK公式Instagramでは、子連れお出かけスポットの紹介やインスタライブを発信中。また、次世代アーティストとデザインコラボする、オーガニックコットンのベビーブランド「Little Gifted」も展開中。