カーティス:うつ症状が出た場合は、どのように対処すればよいでしょうか。

小野医師:最も大事なことは、「休むこと」です。そして「相談する勇気を持つこと」。残念ながら産後うつ病の状態では、脳の判断能力自体のスペックが低下しているため、自分では正常な判断はできません。あやしいと思ったら、オンラインサービスでもいいので、専門家に相談してほしいと思います。

カーティス:本人が症状に気づいていないケースも多いのかもしれません。

小野医師:家族はもちろん、ほかにも冷静に判断できる大人の目を家の中に入れておくことが、早期発見につながります。そういう意味では、実家のご両親、シッターさんや産後ドゥーラさん、保健所の新生児訪問など、「ちょっと様子がおかしいかも」と異変に気付いてくれる人が1人でも2人でも増えたほうがいい。そこから受診につなげられれば対処できます。早期発見であれば回復は早いんです。

カーティス:夫や家族、周囲の人が具体的にできることはありますか?

小野医師:やはりママを休ませてあげてほしい。週に3時間でもいいから、「ママのお休み時間」を作ってあげてほしいです。「育児をしていないから家事をしよう」という考え方も危険です。その時間は映画を見たり、ゆっくりお風呂に入ったり……カフェでひとりでお茶をするのもいいですね。

カーティス:そういう時間に限って、私は携帯で子どもの写真を見ちゃいます(笑)。

小野医師:それでもいいんです。少し子どもと距離を置くことで、改めて会ったときにすごくかわいいと感じる。自分の思いを整理できるんです。それから、子育てには親以外の手も必要です。周囲で抱っこやベビーカーで困っているママの姿を見かけたら、手を貸す意識を持ってほしい。声をかけてあげたり、「最近どう?大丈夫?」ってLINEしてあげたりするだけでも違います。

カーティス:育児中は「大人との話し方を忘れちゃった」というママの話をよく耳にします。産後うつは昔と比べて増えているのでしょうか。専業主婦のほうが多かった上の世代からみると、今の子育て世代は保育園に預けて働く人も多い。「それでうつ病になるなんて甘えている」と考える年配の方もいるんじゃないかと。そういう世代からのなにげない発言がプレッシャーになることもあります。

小野医師:産後うつ病になるかならないかは、根性論という物差しでは測れません。リスクの大小はありますが、誰でもなる可能性はあって、ある意味風邪と同じです。核家族化が進んだことで、昔の大家族のように「ちょっと赤ちゃんを見てて」と気軽にお願いできる人がいない。働く女性が増えたことでママの負担が増えているのに、サポートが不足しているんです。

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