栗花落カナヲ(画像はコミックス18巻のカバーより)
栗花落カナヲ(画像はコミックス18巻のカバーより)

鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎には、何人かの同期がおり、その若手剣士たちの成長も、この漫画の見どころである。栗花落カナヲもその一人。鬼殺隊への入隊試験当時から、冷静さが突出していた栗花落カナヲは、蟲柱・胡蝶しのぶの「妹」のような存在であるが、実の妹ではない。だが、この血縁のない「姉妹関係」にカナヲは人生を救われ、剣士としても大きく成長する。カナヲと胡蝶姉妹の、少し変わった「家族のかたち」を考察した。(以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます)

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■胡蝶家の「継子」

『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、「鬼殺隊」への入隊試験・最終選別を受けた際、試験への動揺をみじんも見せなかった少女剣士がいる。栗花落カナヲ(つゆり・かなを)である。栗花落カナヲは、蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)のもと、「継子」(つぐこ=鬼殺のための技と呼吸の伝承者のこと。弟子)として、異例のスピードでその実力を発揮していく。

 カナヲの使う技は、しのぶと同じ「蟲の呼吸」ではなく、しのぶの姉・胡蝶カナエ(こちょう・かなえ)の「花の呼吸」であった。これには、カナヲと胡蝶姉妹との関係性が影響している。

■栗花落カナヲの突出した戦闘能力

 炭治郎が妹である鬼の禰豆子(ねずこ)を連れていることが原因で、9人の「柱」による「柱合裁判」にかけられた時、最終選別以来はじめて、炭治郎はカナヲと再会する。この時点で、炭治郎と、その同期である我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)・嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)らは、鬼殺の任務をいくつか遂行しており、かなりの実力を身につけていた。しかし、カナヲは、胡蝶家の邸宅「蝶屋敷」の訓練において、彼らを圧倒する強さを見せつける。

 相手の技を見切る「眼の良さ」が常人のそれを超えており、炭治郎の「嗅覚」、善逸の「聴覚」、伊之助の「触覚」と同じく「特殊能力」の域にある。そして、その「眼」を生かすことのできる反射速度、「全集中の呼吸」と呼ばれる特別な呼吸方法を長時間維持できる強靭な肺活量や体力など、カナヲは剣士としての才能が、同期の誰よりも突出していた。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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胡蝶姉妹への複雑な思い