「その時はすぐに大会運営本部に通報してスタッフの方が対応してくれました。思い出しただけでも3回はこういう経験があります。会場内で見かけた時は自分がされたら嫌だし、こういう切り取られ方は気分がいいものではありません。とはいえ私自身、水着でプレーすることも踏まえて競技の特性は理解しています。それでビーチバレーという競技が広まっていくきっかけになるならいいし、自分の職業として割り切っている部分はあります。とはいえ、気分が悪くなるような取り上げ方は嫌ですし……。この問題はすごく難しいと思います」

 職業である以上、水着でプレーすることには抵抗ない。むしろ歴史を振り返れば、時にはグラビア撮影に挑戦する選手、ユニフォーム水着にチームのテーマや想いをデザインし売り出してきた選手もいれば、露出の高いファッショナブルな水着を着用する選手もいる。アンダーウエアには、スポンサー名もプリントされている。その数や大きさは、言わばプロ選手しての勲章。選手が活動していくうえで考え方や捉え方、表現方法はそれぞれである。

 そして鈴木も坂口も、「盗撮されるのが嫌だから、水着でやらないという選択肢はない」と口をそろえる。

■水着の必要性

 国内大会を運営する日本バレーボール協会(以下・JVA)および日本ビーチバレーボール連盟(以下・JBV)のユニフォーム規定には、2017年から長袖やタンクトップ、ショートパンツの着用も認められている。

 そのきっかけとなったのは、国民体育大会(少年少女の部)の正式競技化だ。若年層の門戸を広げるため、ユニフォームの規定に自由度を設けた。それ以降、高校生の全国大会では長袖シャツやタンクトップ、ショートパンツを着用している選手は2割ほどいるが、実際のところ水着で出場しているチームは多い。トップツアーにおいても、全チームがセパレートの水着を着用している(気温が低い時は防寒ウエアの着用は認められている)。これについて前出の坂口は語る。

「確かに最初は水着でプレーするのは少し抵抗がありましたけど、だからといってビーチバレーをやりたくないとまでは思いませんでした。今の規定では、女子選手は水着以外にも選択できるのに、トップ選手は誰しも水着でプレーしています。それは水着が一番動きやすいから。砂の上で手足を激しく動かしてもウエアのように水着はかさばることはない。暑い中でやるので試合中に体温が上がってしまったら、すぐに水をかけて身体を冷やすことができます」

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水着でプレーするメリットは?