冒頭に出てきた鈴木も続ける。

「陸上競技のユニフォームがセパレートなのは軽量化と空気抵抗を抑えられるという文献を読みました。ビーチバレーも考え方はそれと同じ。水着ではなく、仮にタンクトップやTシャツなどウエアの面積が大きいほど、水分を吸って重くなるし肌にまとまわりつくとストレスになります。水着であれば、軽いし早く乾きます。水着でプレーするメリットはたくさんあります」

■今後の防止策

 ビーチバレー選手たちは、水着でプレーしない選択肢もある中で、自ら水着を選択して競技に打ち込んでいる。ユニフォームの性能は競技力と密接しており、そこに必要性があるからだ。だから、盗撮行為によって気分を害することがあっても、断固たる覚悟を持って競技に取り組んでいる。

 選手たちが安心して競技に取り組める環境を築き上げるため、腰を上げなければいけないのは競技団体および大会運営側だろう。

 日本オリンピック委員会(JOC)らスポーツにかかわる7団体は2020年11月13日、『アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿は卑劣な行為』という声明文を発表した。盗撮防止策、SNS上で身を守る方法を呼びかけていくJOCは各競技団体にヒアリングが行った。その中の競技団体のひとつにJVAもあった。

 JVAは、現状の盗撮(透撮)行為の発生有無や、発生している場合の防止・抑止対策などについて、「試合会場等、入場時に常識的な範囲を超える映像機材の持ち込みを制限。警備が会場を回り、目に余る場合には注意するという対策を講じている」と回答したという。

 しかし、実際に選手たちの声を聞くと、その被害は後を絶たない。会場内の警備およびセキュリティの甘さは否めないのが現状だ。撮られる前に撮らせない。「目に余る」以前に行為を食い止めなければいけない。

 JVAビーチバレーボール事業部は、大会会場についての防止策についてこう述べる。

「現在JBVと連携して、2021年シーズンの大会に向け対応策を検討しております。ご存知の通りビーチバレーではすべての大会で、スチールカメラ、ビデオカメラ、近距離での双眼鏡の使用を禁止しておりますが、これに加えて携帯電話での撮影に何らかの制限を設ける方向で検討中です。例えば、セット間を除く試合中の撮影や、選手ベンチ付近やコートエンド席からの撮影を禁止する案が出ております」

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選手をゾッとさせたファンも来場