スケジュールさえ合えばほぼ仕事を断らないスタンスだというが、あるインタビューで山内は「スケジュール的に仕事を受けられないほど忙しくなると、ギャラが上がるのが市場原理。それを狙ってる」と真剣に答えていた。このハングリー精神が彼らの快進撃に繋がっているのだろう。

■屈辱的な敗戦からの大復活

 2004年にコンビを結成。デビュー5年目にはフジテレビの「めちゃイケ」や「はねるのトびら」の流れをくむ「ふくらむスクラム!!」で東京進出を果たすも、1年で番組終了を迎えるという知られざる過去を持つ。関西を拠点とするテレビ局のディレクターは言う。

「彼らが『ふくらむスクラム!!』で東京進出したときは誰もがナイナイやキングコングのような存在になれると思ったので、本人たちもとてもショックだったでしょうね。その後も賞レースではいつも好成績をおさめていましたが、2015年のキングオブコントではまさかの2回戦落ち。この屈辱的な敗戦から山内さんがネタ作りを抜本的に変えることになり、彼らの代表的なスタイルである“憑依的漫才”が生まれたそうです。東京に再進出して彼らが成功できたのは、山内くんの的確すぎるボケが東京のバラエティ番組では非常に重宝がられたから」

 さらに、東京再進出で濱家に大きな変化が。

「これは意外でしたが、濱家さんがイジられキャラというポジションを確立した点も大きい。大阪時代は番組の回し役が多く、むしろイジる側。イジられることを絶対にさせないほどの威圧感すらありましたが、東京の番組ではフジモンや有吉さんからなぜか濱家さんがイジられまくり、結果的に『東京で必要なのは負け顔と泣き顔』と番組で語るようになったのには驚きました。彼のそんな成長がコンビを全国区の人気芸人に押し上げたんだと思います」(同)

 お笑い評論家のラリー遠田氏は、かまいたちがお笑い界で重宝される要因をこう分析する。

「今の時代、テレビの制作費もどんどん削られているため、お笑いコンビではより有能な片方の芸人だけが起用されることも多いものですが、かまいたちは個々人の能力が高いため、コンビで数多くの番組に出ることができている稀有な存在。山内さんは独自の笑いを生み出す発想力があり、ロケでもスタジオでも切れ味鋭いボケを繰り出していきます。一方の濱家さんは、場の状況を把握する能力に秀でているため、ツッコミが上手いのはもちろん、山内さんや共演者のフォローやアシストをしたり、司会進行をしたりすることができます。それぞれが有能である上に、コンビで出たときに最も持ち味を発揮するタイプなので、これからもコンビでの仕事が順調に増えていくのではないかと思います」

 まさに向かうところ敵なしといった感のあるかまいたち。今年はお笑い界をジャックするか。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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