さまざまな動画配信サービスが普及した現在では、人々が面白い動画コンテンツを常に求めている。そのため、上質なコンテンツはネット上の口コミなどを通じてどんどんそれが広まっていき、ますます評判が良くなっていく。

 全国ネットのテレビ番組は、初めからマスに向けて発信しているため、どうしても企画内容が似たりよったりになりやすい。その点、ローカル番組には多様性がある。

 全国ネットの番組よりも制作費が少ないというハンディキャップを逆手に取って、ゆるい雰囲気を番組の持ち味として打ち出すこともできる。ローカル番組で全国でも評価されている番組には、そのようなものが多い。大泉洋が出演していた北海道テレビの『水曜どうでしょう』はその典型例である。

『相席食堂』でも、ロケに慣れていないタレントが迷走するところや、スタッフが演出に失敗して千鳥に説教されるところなどが、逆に見どころになっている。

 インターネットの普及によって、都心と地方の情報格差は劇的に縮まった。だが、テレビの世界では、いまだに地方ごとに別々の番組編成が行われていて、東京のキー局の番組が地方で見られないことも多いし、その逆も多い。

 だが、動画配信サービスの登場によって、テレビ番組の地方ごとの格差もなくなりつつある。低予算のローカル番組であっても、内容さえ面白ければ、全国で評価されて大ヒットコンテンツに成長するという可能性が出てきた。

『相席食堂』はローカル番組の成功例として理想的なものだ。地方局からこのような独自の魅力的なコンテンツがどんどん出てくることに期待したい。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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