「相席食堂」MCの千鳥(C)朝日新聞社
「相席食堂」MCの千鳥(C)朝日新聞社

 2月2日に大阪のローカル番組『相席食堂』(朝日放送)の2時間特番が全国ネットで放送されることになった。東京で放送されていない地方の深夜番組のスペシャル版が、全国ネットのゴールデンタイムで放送されるのは珍しい。

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 なぜそのような特番が実現したのかというと、『相席食堂』がローカル番組の枠を超えた大ヒットコンテンツだからだろう。

 番組の企画自体はいたってシンプルなものだ。毎回さまざまなタレントが地方に出向いてロケを行う。そこで一般人と相席をして、一緒に食事をすることが1つの課題となっている。MCを務める千鳥の2人は、スタジオでそのVTRを見ながら、気になるところで「ちょっと待てぃ! ボタン」を押して映像を止めて、ツッコミやリアクションを繰り出す。

 この番組では、今をときめく人気芸人である千鳥の目線の面白さを堪能することができる。千鳥の2人はロケの達人として知られている。彼らのロケの上手さというのは、単に一般人に愛想良く振る舞えるとか、食事をした時のリアクションがいいとか、そういう次元の話ではない。与えられた状況において、いかに笑いを発見し、笑いを生み出すかということにかけて彼らの右に出る者はいないのだ。

 本来、ロケに正解はないはずなのだが、千鳥は正解を見つけ、ときには自らの手でゼロから正解を作り出してしまう。そんな彼らにとって、ロケに慣れていないタレントのぎこちない立ち振る舞いはツッコミどころ満載に見えることだろう。『相席食堂』では、千鳥がそんな彼らの細かいミスを逐一イジり倒していく。それが痛快で面白い。

 この番組は、ローカル番組でありながらお笑いファンやテレビ好きの間では熱狂的に支持されている。その理由は、この番組がネットしていない地域でも、見逃し配信サービスの『TVer』、サブスク動画配信サービスの『Netflix』『Amazonプライム・ビデオ』などを通じて視聴することができるからだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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ローカル番組には多様性がある