○「もらいさび」 ぬれたナイフ、カミソリ、ヘアピン、クリップなどのさびがステンレス、プラスチック、陶器に付着した汚れです。クレンザーで落ちない場合には、ハイドロハイター(主成分は二酸化チオ尿素、白物衣類専用の粉末還元型漂白剤の商品名)を使うと効果的です。

人気の「おそうじグッズ」は何でできている?
 
 続いて、市販されている「おそうじグッズ」について、化学の視点から、その特徴を説明していきましょう。

 家じゅうピカピカになるといったうたい文句で売られている液体クリーナーや泡スプレーに「セスキ」という文字を見かけたことはありませんか。「セスキ炭酸ソーダ」を利用したおそうじグッズです。

 セスキ炭酸ソーダとは、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ、Na2CO3)と炭酸水素ナトリウム(重曹、NaHCO3)が複塩(2種類以上の塩を含むもの)として共存し安定している物質で、掃除用品として市販されています。重曹よりアルカリ濃度が高く洗浄力が強いのが特徴。水に溶けやすく洗濯にも使えます。重曹のような研磨効果はありません。

 セスキ(sesqui)はラテン語に由来する化学用語で3/2(1.5)の意味で、炭酸ソーダ(sodium carbonate)と重曹(重炭酸ソーダ、sodium bicarbonate、biは二つという意味)からセスキと命名されています。

「過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2 )」は酸素系漂白剤で、浴槽や洗濯機槽を掃除するのに使用され、市販されています。

 水だけで汚れが落ちる「メラミンスポンジ」。多くは白い四角いスポンジで、スーパーやホームセンター、百均ショップでも売られています。使い方は、スポンジに水を含ませてこするだけという手軽さも人気です。

 このスポンジは、メラミンとホルムアルデヒドから作られた硬いメラミン樹脂をミクロン単位で泡状に発泡させてつくられたメラミンフォームという材質でできています。とても細かい無数の網の目がつくられていますので、これで汚れを落とすことができます。

 蛇口、急須やカップの茶渋、ガスコンロやタイルの周り、換気扇、レンジ、炊飯器、冷蔵庫、ドアノブ、窓ガラスなどに、幅広く使えますが、傷つきやすい樹脂加工品、塗装面、木製家具、車の外装面などには使えません。

 知っておきたい「混ぜるな危険」の理由
 
 酸性の洗剤とアルカリ性の洗剤を基本的に混ぜてはいけません。もちろん混ぜても問題の無い場合もあります。前述の重曹とクエン酸、バブの重曹とフマル酸の場合は発生する気体は二酸化炭素・CO2ですから問題ありません。アルカリ性の洗剤で落ちないからと言って、すぐに酸性の洗剤を使う、またその逆の場合をすることも危険です。

 1980年代後半、塩素系のカビ取り剤と酸性の洗浄剤を使って、トイレやふろ場を清掃中の女性が死亡するなどの事故が起こりました。同時に使用したため 、中和反応が進行し発生した塩素ガスによる中毒死でした。化学反応を理解すれば当たり前なのですが、一般的には分からないことです。この事故後、「まぜるな危険」の赤文字が挿入されたのです。

 繰り返しになりますが、酸性の汚れはアルカリ性の洗剤を、アルカリ性の汚れは酸性の洗剤を使います。現在、種々の洗剤が市販されていますが、それらがどっちの洗剤なのか使うときに知っておく必要があります。洗剤のラベルには成分が記載されていますので、それを読むことをお奨めします。分からない場合には調べましょう。注意書きも忘れずに読むことが必要です。

>>【前編】「やかんやポットの水垢はどうやって落とす? 目からウロコの化学的な大掃除のコツ」はこちら

<プロフィール>
和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している