写真はイメージです(Getty Images)
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和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している
和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している

 師走に入り大掃除の時季になりました。汚れにはいろいろあり、簡単に拭くだけで落ちるもの、なかなか落ちにくいものがあります。落ちにくい汚れを簡単に落とせる方法は主婦・主夫にとって救世主となります。徳島大学名誉教授・和田眞さん(専門は有機化学)が、水回りの掃除について化学の視点からアドバイスします。

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■汚れの正体がわかれば掃除も効果的に

 身の回りにある汚れの8割は酸性の汚れ、2割はアルカリ性と言われています。汚れは中性洗剤やクレンザーで落としますが、しつこい汚れは化学的に落とすのが簡単です。酸性の汚れはアルカリ性の洗剤を、アルカリ性の汚れは酸性の洗剤を使います。

 例えば、ポットややかんにできる水垢の正体は、炭酸カルシウム・CaCO3を主成分とするカルシウム塩やマグネシウム塩です。アルカリ物質なので、水垢を溶かすには、酸性のクエン酸が適しています。

お風呂などの「排水口掃除」に役立つのが、重曹(NaHCO3)とクエン酸です。重曹とクエン酸を組み合わせたときに発生する泡の力(CO2ガス)で、排水口の汚れを落とします。ヒット化学商品の一つ、入浴剤バブは、重曹とフマル酸を組み合わせて水中でミクロなCO2ガスを発生させ、血行を良くします。掃除と入浴という異なる生活シーンで使われますが、化学的には全く同じ反応です。
 
 さて、汚れの性質ごとに、掃除の仕方や注意点をまとめてみました。

○「ぬめり」 ぬめりは気持ちのいいものではありません。排水口や排水トラップなど水がたまる場所にでき、細菌やカビの繁殖によるものです。こまめな掃除が必要です。次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が効果的ですが、予防に適しているのは10円玉やアルミホイル。排水口に入れておくと、ぬめりが軽減されます。銅イオンの微量金属作用には、細菌類を死滅させる性質があるからです。しかし、金属になぜ殺菌作用があるかについては諸説ありいまだに明らかではありません。

○「ざらつき」 せっけんや体の脂肪分が水道水中のカルシウムやマグネシウムイオンと反応してできるせっけんカス(金属せっけんともいう)と呼ばれる汚れです。白っぽく、ザラザラしています。目につく汚れとなったときは、簡単には落ちず、浴槽のふちや、ふろおけにできやすい汚れです。軽度のものは中性洗剤で落ちますが、頑固なものはクレンザーでこするといいでしょう。

○「黒ずみ」 浴室の床や壁、便器の内側、サッシ、タイル目地や境目に使われるシリコンシール材などにできやすい汚れです。空気中のカビが、せっけんやあかなどを栄養源に繁殖した汚れです。放っておくと、カビは奥底まで入り込み、完全に除去することが難しくなります。これには、次亜塩素酸ナトリウムが効果的で、根気強く何回も試みることが重要ですが、漂白効果による色落ちの危険がありますので注意が必要です。

○「ピンク汚れ」 水の中の細菌(バクテリア)がせっけんやあかなどを栄養源として繁殖した汚れです。トイレや洗面台の排水口や水栓まわり、便器の内側や浴室の床や壁などにできやすい汚れです。この汚れは中性洗剤を使って、スポンジでこすると比較的容易に落とすことができます。

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