普段は照れくさくて言えない言葉も、ゲーム感覚なら伝えられる?(撮影/高橋奈緒・写真部)
普段は照れくさくて言えない言葉も、ゲーム感覚なら伝えられる?(撮影/高橋奈緒・写真部)
結婚社会学アカデミーが製作した「恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード」(撮影/高橋奈緒・写真部)
結婚社会学アカデミーが製作した「恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード」(撮影/高橋奈緒・写真部)
ブックレットの監修をした、公認心理師・臨床心理士の杉野珠理さん(提供写真)
ブックレットの監修をした、公認心理師・臨床心理士の杉野珠理さん(提供写真)

 コロナ禍の在宅勤務や外出自粛の影響で、家族が自宅で過ごす時間が増えている。夫婦や家族によっては、一緒にいる時間が増えたことでかえって関係が悪化しているケースも少なくない。そんな事態を打開する目的で6月に発売されたのが、「恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード」だ。これは、ポジティブな言葉が書かれたカードを使って、ゲームとしてお互いにポジティブな言葉を伝え合うというもの。ポジティブな言葉を伝えるだけで、本当に夫婦関係や家族関係が良好になるのだろうか? このカードに付属するブックレットを監修した臨床心理士の杉野珠理さんに、心理学の観点から解説してもらった。

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 大阪に単身赴任している男性会社員Aさん(36)。妻(38)と、小5・小3・年長の3人の息子が住む愛媛県の自宅には、これまで月に一度は帰っていたのが、今年はコロナの影響で3カ月以上帰宅できなくなってしまった。毎日1時間はビデオ通話するなど家族仲はいいほうだが、気がかりだったのは妻一人に子育ての負担が偏ってしまっていること。そのうえコロナによる休園・休校で子どもたちもストレスがたまり、兄弟げんかが増えていた。特に長男は反抗期の入り口なのか、妻とも何かと衝突するようになっていた。

「乱暴な言葉遣いをされたりすると私も感情的になってしまい、親子げんかが絶えない状態でした」と妻は明かす。そんなとき、Aさんはインスタグラムで「恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード」を見つけた。

 このカードは、「共感してくれてありがとう」「聞き上手だね」「前向きでいいね」など、感謝や相手をほめるポジティブな言葉が一つずつ書かれた48枚のカードと、1・2・3・5の数字がそれぞれ書かれたコイン型のチップ各7枚で構成されている。遊び方のバリエーションはさまざまだが、基本ルールはカードを毎朝1枚ずつ引き、そこに書いてあるワードをその日のうちに伝える、というもの。単に脈絡なくそのワードを言うのではなく、ぴったりくるシチュエーションで伝えるというのがポイントだ。先に言えたほうが「5」のチップ、後に言ったほうが「1」のチップをもらえるなどルールを決めて、1週間分のチップの合計数で競い合う。

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反抗期の長男に変化が