もちろん、アメフトばりのタックルを野球の試合でしてしまったのだから、メジャーリーグ機構も黙っていない。ベルはこの行為により、5万ドル(現在のレートで約530万円)の罰金を科され、5試合の出場停止を食らうこととなった。加えて、カウンセリングを受けることも命じられている。

 しかも驚きなのが、過去100日に満たない日数の中でこれが3回目の処分であり、ゲッツー崩し事件以前にも4回の処分を下されている。そのうちの2回は投手への“攻撃”によるもの。残りの2回はスタンドにいるファンにボールを投げつけたことと、バットにコルクが仕込まれていたことが発覚したことによるものだ。

 ただ単に気性が荒いだけならばいいが、コルクを仕込むなど“知能犯的”なところも、ベルをよりダーティーな選手として世間に認識されるキッカケとなった。

 また、グラウンド外でも暴走することが多かったベル。ハロウィーンではお菓子をねだりに来た少年を車で追いかけまわし、保護者に訴えられたこともあった。女性リポーターに対しては5分間にわたって汚い言葉で罵るなど、“悪童エピソード”には事欠かなかった。

 そのため、野球では超が付く一流だったが、品位も重視する全米野球記者協会の投票が伴うMVPとは無縁。1995年には未だメジャーで唯一となるシーズン50本塁打と50二塁打を同時に達成し、チームのワールドシリーズ進出への大きな原動力となったが、MVPの投票では2位どまり。引退の5年後から投票の資格を得る殿堂入り投票でも、1回目が7.7%、2回目がそれを下回る3.5%の得票率となり、早々と殿堂入りの資格を失った。

 しかし、今年4月にメジャーリーグ公式サイトMLB.comが掲載した「MVPの投票をやり直したら……」という企画記事では、95年のMVPに堂々選出されるなど、やはりその実績は誰もが認めるところ。本人も「遅かれ早かれ、限られた試合数で自分がどれだけ凄い数字を残したか、気づく日が来るだろう」と過去に米メディアに対してコメントしている。

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引退後も問題行動は終わらない…