メジャーリーグで悪童として知られたアルバート・ベル(写真/gettyimages)
メジャーリーグで悪童として知られたアルバート・ベル(写真/gettyimages)

 かつてインディアンスなどで活躍したアルバート・ベルという選手をご存知だろうか……。

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 メジャーでの実働は12年ながら、打率.295、381本塁打、1239打点、アレックス・ロドリゲス(ヤンキースなど)やデービッド・オルティス(レッドソックスなど)を上回る歴代13位の長打率.564の成績を残し、5回のオールスター選出を果たしたレジェンド級の選手だ。1995年には50本塁打、126打点で二冠に輝いたパワフルなバッティングを鮮明に覚えている人もいるのではないか。

 しかし、その輝かしい功績よりも、アメリカの野球ファンがアルバート・ベルという名前を聞いて真っ先に思い出すのは、「悪童」の2文字であることは確実だ。というのも、彼が現役時代にグラウンド内外で見せた行いが、とても皆に愛されるプロ野球選手像とは程遠かったからだ。

 まず、ベルがグラウンドで見せた悪行として誰もが思い浮かべるのは、1996年のブルワーズ戦で見せたゲッツー崩しであろう。今でもファンの間である意味で伝説的なプレーとして語り草になっている。現在では禁止とされているものの、かつては激しいゲッツー崩しのスライディングも珍しくなかったメジャーでも、ベルのプレーは明らかに度を越していた。

 というのも本来ゲッツー崩しというものは、セカンドベース上、少し離れたとしても、あくまでベース付近で実行されるものである。だが、ベルはちょうど一塁と二塁の中間付近に転がったゴロを捕球し、ベルにタッチしようと近づいた二塁手に対し、ゲッツー崩しを実行したのである。それもアメフトのようなエルボー付きの強烈なタックルで……。

 その試合でブルワーズの二塁を守っていたフェルナンド・ビーニャの身長は175cm、体重77kgと小柄な部類だったが、一方でベルは身長185cm、86kgと一回りほど大きい。当然ベルのタックルを食らったビーニャは、絵に描いたような吹っ飛ばされ方をしたが、ボールは落とさずに結果はアウト。その後、ビーニャはベルを睨みつけ互いに言い合いとなった。だが、ベルは何事もなかったかのようにヘルメットを拾いあげ、「お前なんて相手じゃねーんだよ」と言わんばかりの表情で、ビーニャを威圧しながら平然とベンチに戻っていったのが印象的だった。

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ベルの度を越した行動の数々