だが、暴走ぶりはインディアンスを去った後も続き、オリオールズ時代もやる気のないプレーで途中交代を命じられて監督と衝突するなど、翌年に34歳で引退するまで感情をコントロールすることが出来なかった。

 そして、引退後も問題のある行動が度々話題となった。

 2006年に元交際相手に対するストーキング行為で90日間の懲役刑判決を下されたかと思えば、最近では2018年に飲酒運転と、公共の場での“立ち小便”で局部をさらして逮捕されている。

 このように救いようのない行為を連発したベルだったが、これだけ活躍したのだからファンに愛されていたのも事実。メジャーリーグ公式YouTubeチャンネルがアップした過去のサヨナラ弾の動画には「アルバート・ベルが殿堂入りしてないなんておかしい」「彼は最高のバッターだ」など、実力を高く評価するコメントが多く書き込まれている。

 当時、インディアンスが本拠を置くオハイオ州に住んでいた日本人男性(当時10代)も、ベルの大ファンで「敵地では常に激しいブーイングを浴びていたけど、当時黄金期を迎えていたチームの絶対的主砲はオハイオではヒーロー。毎試合満席で埋まる本拠地では大歓声で迎えられていた。学校にベルのTシャツを着てくる友人もたくさんいましたね」と思い出を振り返る。

 過去には、日本人選手にも“悪童”として知られた選手はいたが、ベルはケタ違いであった。グラウンド外でのヤンチャも時には許されるが、ベルの行為は笑いごとで済まないことがあまりにも多かった。「もっと人間ができていれば……」と悔やむファンも多いだろう。これだけ選手としての功績と、人間力がかけ離れたプレイヤーは他に見当たらないのではないか……。