1980年代前半、学術会議は「核戦争の危機と核兵器廃絶」に関する声明を発表している。政府からは、相変わらず特定のイデオロギーに支配された学術会議を改革せよという意見が出ていた。

 たとえば、中山太郎・総理府総務長官はこう激しく批判している。

「学術会議の現状を病気に例えればがんだ。国権の最高機関である国会に改革案を提出して手術しなくてはならない」(朝日新聞1981年11月18日)

 1990年代以降、学術会議の声明や提言、政権との関係に関する報道が少なくなった。

 2010年代、学術会議は「学術と軍事が接近」と認識し、懸念を示している。

 たとえば、2015年に防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」をスタートしたことについて、大学と“軍”の共同研究になるのでは、と大いに警戒した。

 一方で、学術会議会員からは、軍学共同を許容する意見も出始めている。大学の財政が厳しく研究費を十分に確保できないなどの理由からだが、以前ならば考えられないことである。それだけさまざまな考え方の会員が増えたということだ。

 2017年、学術会議は軍事目的のための研究を行わない旨の声明を出した。

「1950年に『戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない』旨の声明を、また1967年には同じ文言を含む『軍事目的のための科学研究を行わない声明』を発した背景には、科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、上記2つの声明を継承する」

 日本の国防を充実させたいと考える政府関係者は、当然、この声明をこころよく思っていない。

 学術会議は政権の言うことをちっとも聞かない。両者の関係の歴史を振り返ると、政権が学術会議を嫌う理由はこれに尽きよう。

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