今季はここまで石川歩、美馬学、種市篤暉、二木康太、岩下大輝、小島和哉、中村稔弥の7人が主にローテーションの中心となっている。この中で左腕は小島、中村稔弥の2人だけ。近年DeNAなどは左投手を多く入れ、ローテを編成する球団が増えている。ロッテはその中でも異色であると言えたが、ここにチェンが1人加わるだけでも層が厚くなるのは言うまでもない。故障者も出始める時期だけに、一刻も早いチェンの合流が待たれている。

 だが、チェンが近年メジャーで全くいい投球ができていなかったのは先述の通り。

 他球団のチェンに対する評価も芳しくないものが多い。米国時代の晩年、マーリンズ移籍後の3年間は安定感を欠いていた。また中日時代の06年に靱帯断裂と疲労骨折で手術をした左ヒジを再び故障するなど、常に不安がつきまとっている状態。コロナ禍で球団経営も圧迫され、各選手に対する評価もシビアになっている。米国でのチェン株は下がり続けていたというのだ。

「故障の影響が大きいという判断。かばいながら投球するので、左ヒジが下がり身体の開きが早くなる。チェンの大きな特徴は、打者から腕が見えにくく、リリースがわかりづらい点。同じ左投手で言うとソフトバンク和田毅のよう。加えて腕を多少、下げ気味で振るから、左打者にとっては身体の後ろから球が向かってくる。右打者もかなり遠くからクロスファイヤー気味に食い込んでくる。特筆すべき球種がなかったのに三振が取れたのは、投球フォームによる部分が大きい。故障の影響で以前のような打ちにくい投手ではなくなった」(MLBアジア地区担当スカウト)

 ロッテ同様、チェン獲得の可能性が取り沙汰されたのは古巣・中日だった。黄金期を築いた左エースだったため、いまだに多くの人の記憶に残っている。「将来の中日復帰を容認する」、という意見が球団内で多数だったと言う証言もある。マーリンズから自由契約となった際には、チェン獲得に動くため、情報収集などの準備もされていたという。

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古巣中日はチェン獲得に動かず正解?