しかし、これらの保存療法では効果が見られず、夜間の痛みや動きの制限などで日常生活に困る場合は、手術が検討されるという。

 変形が軽い人で、関節内の炎症を起こしている組織や骨・軟骨のかけらを取り除くだけで済む場合には、肩の関節内に内視鏡と手術器具を挿入しておこなう関節鏡視下手術が選択される。上腕骨の変形があるが肩甲骨の変形がほぼない人は、上腕部の骨頭だけを人工骨頭に置き換える手術をする。

 より重度になり肩甲骨の受け皿もかなり変形していれば、人工肩関節全置換術が必要だ(イラスト参照)。上腕骨の骨頭と肩甲骨の受け皿を人工肩関節に交換する手術で、腱板が切れていないことが条件になる。

「手術でどれくらい改善するかは、個人差があります。痛みは比較的よく取れますが、手術後の動きについては、手術前の機能、特に腱板の状態によって左右されます」(岩堀医師)

 腱板断裂性の変形性関節症で腱板機能が失われている場合、普通の人工肩関節を入れても肩を動かせないため、以前は大きな人工骨頭置換をするくらいしか方法がなかった。しかし、2014年4月にリバース型人工肩関節(イラスト参照)が日本でも認可され、新たな選択肢が生まれた。

「リバース」は「反対」を意味し、従来の人工肩関節と比べて、骨頭と受け皿が逆さまになっている。深くて大きい受け皿によってかみ合わせがよくなり、回転中心が内側に入り、かつ上腕骨が少し下がることで三角筋の力が十分に発揮できるため、腱板がなくても三角筋だけで腕を上げられる。

「修復不能な腱板断裂を伴う変形性肩関節症でも、人工関節を使えるようになりました。日本では腱板断裂性変形性関節症が多いため、従来型よりリバース型を用いる症例が多くなっています」(同)

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