■熟練した専門医の手術を受けるべき

 リバース型人工肩関節置換術は、日本への導入以前、合併症が多い手術であることが知られていた。

「手技が未熟だと、肩関節の先端部分にある肩峰の骨折、感染症などの合併症の発生率が高くなります。経験豊富な熟練した専門医のいる病院で、手術を受けるべきでしょう」(菅谷医師)

 リバース型人工肩関節置換術を実施できる病院は、現在全国に100施設以上あると言われている。積極的に実施する病院と、なるべくやらずに慎重に適応を選ぶ病院とがあるようだ。

 困っている症状、希望する活動レベルなどを医師と話し合い、納得したうえで手術するか決める必要がある。

「リバース型人工肩関節は、構造を変えてしまうため、いわば最終手段。適応は原則70歳以上で機能障害が著しい人に限られており、若い人にはあまりやりません。長期使用により何年もつかは、日本では導入されて数年しかたっていないため、まだはっきりしていません。海外の使用例からは10年くらいで人工関節破壊やノッチングと呼ばれる肩甲骨下方での骨吸収が起こることが危惧されており、素材の改良や術式の工夫が試みられています」(同)

 リバース型人工肩関節では、従来の人工関節より術後のリハビリが楽におこなえる。
 
 綿密なリハビリが不要で、長期間のリハビリが難しい高齢者にとって好都合だ。

「ただし、たとえ術後経過がよく、すっかり痛みが取れて手が上げられるようになっている場合でも、重労働は避け転倒などの外傷には十分注意する必要があります。人工関節が入っているので、定期的な受診と経過観察は欠かさないようにしましょう」(岩堀医師)

 変形性肩関節症は、変形が進行しすぎたり、骨の量が減ったりすると手術が困難になることも。つらい肩の痛みは我慢せず早めに医師に相談することが大切だ。

(文・坂井由美)

≪取材協力≫
あさひ病院 スポーツ医学・関節センター長 岩堀裕介医師
船橋整形外科病院 スポーツ医学・関節センター長 菅谷啓之医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より