安倍晋三首相が辞任の意向を固めて28日、首相官邸で会見を開いた。その様子を全文掲載する。

>>『安倍首相辞任会見【全文(2)】「痛恨の極み。志半ばで断腸の思い」』からつづく
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(読売新聞)
――結果を出すことに全身全霊を挙げてきたが、在任中に成し遂げてきたことの中で、ご自身の政権のレガシーだと思われるものがあれば また、後継の首相に託したいことがあれば。

安倍首相:レガシーというおたずねでございますが、これはまさに国民の皆様がご判断いただくのかなと。また歴史が判断してくれるのかと思いますが、7年8か月前、政権が発足した際には、まず「東北の復興なくして日本の再生なし」、「東北の復興に全力をあげる」ということで取り組んでまいりました。また、経済においては働きたい人が働くことができる、働く場を作る、それを大きな政策課題として掲げて、20年続いたデフレに三本の矢で挑み、400万人を超える雇用を作り出すことができました。成長の果実を生かしまして、保育の拡充、また、幼児教育・保育の無償化等を行いました。高等教育の無償化も含めてですね。そして働き方改革や、一億総活躍社会に向けて大きく一歩踏み出すことができたと思っております。

安倍首相:また、外交、安全保障におきましては、集団的自衛権にかかる安全法制の制定をいたしました。助け合うことができる同盟は、強固なものとなったと思います。米国の大統領の広島訪問がその中で実現できたのでございますが、こうした日米同盟を基軸として地球儀を俯瞰する外交を展開する中において、例えばTPP、あるいはEUのEPA、日米の貿易交渉もそうですが日本が中心となって自由で公正な経済圏を作り出すことができたと思っております。これもすべて国政選挙のたびに力強い信任をいただいた国民の皆様のおかげでございまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

同時に今、ご質問いただいた拉致問題、日ロ平和条約の問題、また、憲法改正、どれも大変大きな問題であります。残念ながら、それぞれこの課題が残ったのは痛恨の極みでありますが、どれも自由民主党として全力で取り組んでいくということをお約束している課題、政権としてだけではなくて党としてもお約束している課題でありますから、次の新たな強力な体制でしっかりと取り組んでいただくことを期待しています。

――次期政権に望むことを具体的に教えてください。後継候補とされている方の名前が挙がっておりますが、それぞれのご評価があれば教えてください。

安倍首相:辞めていく私があまり注文すべきではないと思いますが、次の方も何といってもまず、この現状のコロナ対策に全力を尽くされることと思います。ウィズコロナそしてポストコロナの時代に向けて、我々も今ビジョンを示しているわけですが、そうしたものを共有しながら成果を出していただきたい。新しい日常を作り出す中で、それぞれの方々が未来を見据えて進んでいくことができる日本社会をつくっていただきたいと思っています。

そして、それぞれ個別具体的な名前はあえて挙げませんが、名前の出ている方々はそれぞれ有望な方々でありますし、私も一緒に内閣において、あるいは党において働いたことのある方ばかりでございますので、それぞれこの政策を競い合う中においてですね、おそらく相応しい人が決まっていくんだろうと期待しています。

――拉致問題などの外交問題について、在任中に解決できなかったことについて反省すべき点はあるか。また、次の政権においてこうしたアプローチが望ましいというように期待することがあれば教えてください。また、今日の会見でいつも使用されているプロンプターを使用されていないですが、これはどういったお気持ちで会見に臨まれたのか?

(司会:多くの方が待ってますので、どの質問を総理にうかがいたいんですか?)

安倍首相:いいですいいです(手で制する)。

プロンプターは世界で今まで指導者が使っていて私も使ってまいりましたが、今日はぎりぎりまで原稿が決まっていなかったということもあり、私も推敲しておりましたので、こうした形になりました。

そして拉致問題について別のやり方があったのではないかというご質問ですね。この問題は私もずっと取り組んできました。そう簡単な問題ではもちろんないから、今でも残っているわけであります。ありとあらゆる可能性、様々なアプローチ、私も全力を尽くしてきたつもりであります。その中で例えば、かつては日本でしかこれまで主張していませんでした。でも国際的に認識されるようになりました。私も努力をしてきた。アメリカの大統領が北朝鮮の首脳と1対1の場面でもこの問題について言及し、また、習近平主席も言及し、そして文在寅大統領も言及する。これは今までになかったことであります。ただもちろん、それによって結果が出ていない。私は最善の努力をしてきた。

ただですね、私が申し上げましても、ご家族にとっては結果が出ていない中において、お一人お一人とお亡くなりになっていく。私にとっても本当に痛恨の極みであります。常に私は何か他にあるのではないかという、これは何をやっているかということは残念ながらこういう外交においてはご説明できませんが、考え得るあらゆる手段をとってきたことは申し上げたいと思います。

>>『安倍首相辞任会見【全文(4)】コロナ対応「最善を尽くしてきた」』につづく