写真は左から栗原教諭、大村くん、永田くん、武井くん
写真は左から栗原教諭、大村くん、永田くん、武井くん

 2020年コロナ禍の夏。ほとんど全ての大規模イベントが中止に追い込まれる中、5月20日に中止が決まった夏の甲子園の代替大会として『甲子園高校野球交流試合』が行われ、TV中継もされた。それに先立って各地方ごとに代替試合もあって、高校球児たちの夏は少し報われたかもしれない。

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 その一方で、『全国高校総合体育大会(通称インターハイ)』は甲子園に先立つ4月26日に中止が早々と発表されてから、都道府県ごとに対応が分かれたままなのが現状だ。試合もないまま、最後の夏を終えていく高校3年生たちが日本全国に大勢いる。

 静岡県沼津市にある飛龍高校・相撲部の3年生3人も、そうした「大会のない夏」を過ごす生徒たちだ。昭和47年、旧・沼津学園時代に創部された飛龍高校相撲部には現在、男女14名が所属する。そのうち3年生の男子は3名で、キャプテン(現在は2年生に交代)の大村晃央(あきひろ)くん、永田涼真(りょうま)くん、武井朔太郎(さくたろう)くんがいる。人数は多くないが、少数精鋭。昨年のインターハイで個人優勝して高校横綱になった大桑元揮(現・大相撲の颯富士)や、十両の翠富士らは、彼らの先輩にあたる。ここ数年、とくに注目されている相撲部だ。今年のインターハイで個人&団体W優勝を狙うべく、これまでになく今年は力の入った年だった。 

「今年の目標は日本一、インターハイ団体での優勝でした。昨年は大桑が個人優勝し、今年は『団体でも優勝を!』と目標を掲げ、そのために3月21、22日に高知県で行われる予定だった『全国高等学校相撲選抜大会』での3位以内を目指していました。この大会では2018年にうちが団体優勝していて、2月から気持ちを集中させて稽古を重ねていたんですが、ちょうど選抜高校野球の中止が決まった(3月11日)ころに中止が決まりました」

 そう教えてくれたのは、飛龍高校相撲部顧問の栗原大介教諭(43歳)。学校では社会科を教え、2年生の担任でもある栗原教諭にとっても、20年以上の相撲部顧問の経験の中で初めての事態だ。

「休校が決まり、一切の稽古もできなくなってしまいました。うちは寮生もいるんですが、全員が帰郷しました。そのうち緊急事態宣言が出され、インターハイも国体も中止になりました。県内の代替試合を高体連が検討してはいるんですが、感染リスクがあるので難しいのが現状です」

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