■高齢者の骨折は健康寿命を左右する

 最近、日本骨粗鬆症学会では、高齢者が骨折を機に命を脅かされる状態になることを“骨卒中”と呼び、その危機感を訴えている。

「高齢者の骨折は軽視できません。80歳以上では、骨折後の生存率は急激に悪化します。大腿骨近位部骨折の5年生存率は、50%程度という研究報告があり、それは、肺がんのステージIIと同程度です(全国がんセンター協議会)」(同)

 金谷医師は、最近、骨粗鬆症の診療時、数値の提示方法を変えたという。

「通常は“あなたの骨量は若い人の70%程度です”という言い方をします。しかし、それでは患者さんはわかりにくい。私は、グラフを見せながら、“あなたは60歳ですが、今、80歳くらいの骨量ですよ”という説明をします。すると患者さんはびっくりします。脅すわけではありませんが、現在の病状をしっかり理解してもらうためには大切だと考えています」

 自分で骨の状態を調べる骨折リスク評価ツール(FRAX)は、インターネットで見ることができる。年齢、性別、体重、身長、骨折歴、両親の大腿骨骨折歴、ステロイド服用歴、リウマチの有無、他病の有無、アルコール摂取などを入力して計算すると今後10年間に骨粗鬆症骨折が生じる確率が出る。主要骨折リスクが15%以上だと他の検査でも評価し、骨粗鬆症の治療が必要となる場合がある。

「ぜひ参考にしてください。医療機関でも問診により測定できます。そして、骨粗鬆症と診断されなくても、早めに食事や運動の指導を受けて、骨粗鬆症を予防しましょう」(同)

(文・伊波達也)

≪取材協力≫
伊奈病院 副院長 石橋英明医師
金谷整形外科 院長 金谷幸一医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より