コロナ禍で無観客となる神奈川の代替大会には、吹奏楽の応援はない。それでも、「夏は集大成の大会。やはり特別」だと山里さんは意気込む。

 ただ、戸惑いを隠せない選手もいる。同じく連合を組む市川崎の3年生・坂本結人さんはこう話す。

「野球のプレーを通じて、チームの選手たちと仲良くなることはできました。ただ、合同練習は数えるほどしかできなかったので、仲間の名前を全員は覚えられないままでした」

 坂本さんがそう思うのも無理はない。連合チームの選手たちが初めて顔合わせをしたのは7月11日のこと。大会までに行った合同練習は数回で、他校との練習試合は1試合しかできなかった。

 彼らは最後の夏を、どう戦うのか――。

 8月2日、大会当日を迎えた。正午過ぎ、会場となった横須賀スタジアム(横須賀市)周辺には、徐々に連合チームの選手たちが集まり始める。日差しが照り付け、この日の最高気温は30度超え。立っているだけで汗が噴き出てくるが、選手たちはそろってマスク姿だ。

 新型コロナウイルスの感染対策のため、県高野連は厳戒態勢を敷く。選手たちの球場入りの際、まるで検問のように高野連関係者が入り口前で待ち構える。その手には体温計。37.5度以上だった場合、球場入りできないルールになっているのだ。選手や監督、マネジャーたちは順番に並び、流れ作業のように額に体温計をかざされ、平熱が確認されると続々と球場入りしていく。

 ベンチ外の選手はスタンドで観戦できるが、神奈川県の大会では保護者の球場入りは認められていない。球場入りする選手に、「頑張ってな!」と最後の言葉をかける保護者の姿が印象的だ。

 なかには思わぬハプニングも。対戦相手の湘南学院の選手からは2人、「37.5」「37.7」と基準を超える体温が確認されたのだ。2人はすぐに列から外れ、日陰で待機させられる。

「え、(体調は)全然大丈夫だよな!?」

 2人の選手は焦ったように話していたが、その後再検査し、すぐに体温が基準以下であることが確認された。2人は安堵した様子で球場に入っていった。

次のページ
球場入りできない保護者たち…