かまいたちの山内(左)と濱家(C)朝日新聞社
かまいたちの山内(左)と濱家(C)朝日新聞社

 コロナ禍で2020年のお笑い界は荒れ模様だ。一時はお笑いライブやバラエティ番組の収録も軒並み中止になり、芸人たちは窮地に立たされた。その後、リモート撮影を取り入れる形で少しずつスタジオ収録も行われるようになってきたが、先行きは不透明である。

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 そんな荒れ模様の今年のお笑い界で着実に結果を出しているのは、何と言っても「お笑い第七世代」と呼ばれる新進気鋭の若手芸人たちである。昨年あたりからその言葉が注目されるようになって以来、彼らの勢いはとどまるところを知らない。

 現在ではすでに一時的なブームという状況を超えて、お笑い界の中で1つの勢力を確立した。あらゆるネタ番組やバラエティ番組で欠かせない存在となりつつある。

 そんな第七世代の怒涛の勢いの陰で、じわじわと支持を広げている芸人がいる。山内健司と濱家隆一の2人から成るかまいたちである。今年に入ってから一段とテレビ出演の機会が増えていて、出ている番組の本数では第七世代の上位組にも見劣りしない。しかも、お笑いコンテストなどの後で一時的に注目されているような状態ではなく、地に足のついた出方をしている。

 彼らはもともと大阪のお笑いコンテストを総なめにしてきた実力派芸人だった。2017年に『キングオブコント』で優勝し、2018年に東京に進出。2019年の『M-1グランプリ』では準優勝を果たした。

 漫才でもコントでもハイクオリティなネタを量産している上に、ロケもトークもMCもこなせる万能型芸人として大阪のテレビでは重宝されてきた。

 だが、そんな彼らも、東京のテレビでは苦戦を強いられていた。2017年に『キングオブコント』で優勝してから、テレビに出る機会は増えたものの、自分たちのセルフイメージと扱われ方にギャップがあり、その溝を埋める作業が上手くできていなかった。

 ダウンタウンの松本人志は著書『遺書』の中で「大阪の芸人は、二回売れないといけない」と書いた。その後もたびたび引き合いに出されるこの言葉は、松本自身が東京に出てきた際に苦労した経験から導き出されたものだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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