関西芸人が大阪でどれだけ売れていても、東京に出ると知名度がほぼゼロの状態からスタートすることになる。大阪のテレビと東京のテレビでは番組の作り方も出演するタレントの顔ぶれも何もかも違う。

 そこで結果を出すためには、単に今まで通りのことを続けるだけではなく、東京のテレビに合わせて自分たちのキャラクターを微調整するという作業が求められる。

 この段階で重要なのは、ボケ側よりもツッコミ側の芸人のあり方だ。なぜなら、環境が変わってもボケの芸人の立ちふるまいはそれほど変える必要がないのに対して、ツッコミの芸人はより大きな変化を求められるからだ。

 多くの場合、ツッコミ担当の芸人は大阪のテレビ番組でMCを経験している。だが、いざ東京に進出すると、そんな彼らが自分より格上の先輩芸人やタレントがMCを務める番組にゲストとして出ることになる。ここで頭の中のモードを上手く切り替えられるかどうかが勝負の分かれ目になる。

 例えば、かまいたちよりも前に東京に出てきて苦労していた芸人として千鳥が挙げられる。千鳥の大悟のボケのセンス自体は、大阪時代とほとんど変わっていない。一方、ツッコミ担当のノブのキャラクターには微妙な変化があった。

 東京では先輩芸人にイジられる機会も増えたため、リアクションとしてのツッコミの味付けがやや濃くなり、わかりやすく親しみやすいものになった。「嘆きツッコミ」と呼ばれるそのツッコミの「嘆き」の度合いが強くなった。そのことによって、千鳥は東京のテレビの視聴者に受け入れられ、地位を確立した。

 かまいたちも数年前に千鳥が歩んだのとほぼ同じ道を歩いてきた。東京のテレビでは、ツッコミ担当の濱家がしばしば先輩芸人にイジられている。最初のうちは明らかに受け身を取らされることに対する違和感が見受けられたが、最近ではそれがなくなってきた。

 テレビ出演の経験を重ねる中で、先輩芸人との関係性が深まり、距離が縮まってきたということもあるのだろう。濱家の肩の力が抜け、自然に振る舞えるようになってきた。それに伴って、かまいたちが番組やコーナーの仕切りを任される機会も多くなっている。

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コンビ単位のほうが最も良さが発揮されるのも千鳥に似ている